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完全主義とビッグ・ファイブ性格特性との関連

以前,「完璧主義」と言うか「完全主義」と言うかという問題について書いたことがあります。

「完璧」という言葉には「璧」という文字が使われています。「璧」は壁ではなく,傷のない宝玉を意味しています。そして,完璧には「欠点や不足がなく,非常に立派なこと(さま)」という意味があります。

ところが,完全主義や完璧主義であるperfectionismは,心理学では「良い意味とは限りません」。むしろ,精神疾患にもつながるよくない特徴を示す心理的な特徴です。

そういう理由があって,心理学の論文では「完璧主義」ではなく「完全主義」という言葉が使われているのではないかと思います。日常語としては「完璧主義」を使う人が多いにもかかわらず,論文では「完全主義」がよく使われる理由は,そのあたりにあるのではないでしょうか。

完全主義の種類

これは完全主義だけでなく多くの心理特性について言えることなのですが,ひとつの心理特性は細かく見るといくつかの要素に分かれることがよくあります。

完全主義も同じで,多次元のいくつかの要素に分かれることができます。適応的なものと不適応的なものや,自分に向けた完全主義と他の人に向けた完全主義など。

その中でも,おおまかに2つの次元に完全主義を分けるという話があります。

ひとつは完全であることへの懸念(Perfectionistic Concerns)と,完全であることへの努力(Perfectionistic Strivings)という分類です。完全であるべきだという考え方と,実際の行動につながる要素に,完全主義を分けるものだと言っても良いかもしれません。

そして,どちらかというと「懸念」はネガティブな要素を含み,「努力」はポジティブな要素を含む特性のようです。この両者を組み合わせて,「懸念が低く努力が高い」完全主義を適応的な完全主義,「懸念が高く努力が低い」完全主義を不適応的な完全主義,両者が低い状態を非完全主義と考える研究もあります。

完全主義とビッグ・ファイブ・パーソナリティ

完全主義は,ビッグ・ファイブ・パーソナリティとどのように関連するのでしょうか。ぜひ予想してみてください。特に,先ほど説明した完全主義の2つの側面の違いは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティとの関連に反映するのでしょうか。

メタ分析で,完全主義とビッグ・ファイブ・パーソナリティとの関連を検討した研究があります。この論文(Perfectionism and the Five-Factor Model of Personality: A Meta-Analytic Review)です。

論文データベースで,完全主義とパーソナリティとの関連を検討した論文を検索していきました。検索結果として出てきた研究は2000本以上あったそうですが,いくつかの基準でそこからメタ分析に使うことができる研究を選んでいきます。

最終的に,77論文,95サンプルがメタ分析に使われました。

結果は

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