皮肉なもの言い
あなたの友人は職場の会議でプレゼンテーションをしています。あなたは,数人の会議の参加者たちが退屈していることに気づきました。会議のあとで,友人があなたに「どうだった?」と尋ねてきました。あなたは次のうちどのように答えるでしょうか。
1. 君は本当に,聞き手を魅了する方法を知っているんだね。
2. なんとかがまんして聞くことができたよ。
3. プレゼンを黙って聞くのが好きな人なんていないよ。
4. 会議のプレゼンなんてなくしてしまえばいいのにね。
あなたがいちばん言いそうなものを選んでみてください。
皮肉
英語でサーカズム(sarcasm)という表現があります。日本語で近いのは「皮肉」かなあと思うのですが,日本語の皮肉とも少しニュアンスが違っているようです。辞書には「皮肉・辛らつな言葉」「皮肉・あざけり」などと書かれています。
なかなかニュアンスをつかむのは簡単ではありませんが,皮肉(アイロニー)とは違ってサーカズムは他者を中傷するものではなく,皮肉を言いながら周囲を笑わせたり和やかにさせるようなものも含むようです。現実とは違う表現をその場の共通認識の下でしていく会話,といいましょうか。社会的に見て,良くない行為というよりは,その場の雰囲気に合わせて笑いをも誘うような,望ましい言い回しのことを指します。
でもこういう表現って,リアルタイムで出てくると本当に対応できなくて困ります……。
どの言い回しを選ぶか
さて,最初に示した例は,今回紹介する論文の中に例として挙げてあったものを修正したものです。
4つの選択肢があるのですが,1番は「皮肉」,2番は「批判」,3番は「励まし」,4番は「話題そらし」とでも言うことができる反応のパターンです。この中では,1番がサーカズムに近いかもしれませんが,ちょっと違うようにも思います。相手を傷つけるような言い回しになっていなければ,それに近くなりそうですが。
怒りとサーカズム
怒りやすさとサーカズムとの関連を検討した研究があります。この論文です(Trait anger and sarcasm use)。
この研究では,「特性怒り」と呼ばれる,パーソナリティのような怒りやすさに注目しています。
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