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リスクをとりやすい人の性格

リスクをとるというのは,結果において分散の小さな選択肢よりも,分散が大きな選択肢のほうを選ぶことを指します。

たとえば手元に100万円があるとしましょう。あなたならどれを選びますか?

◎定期預金に入れる
◎投資信託を購入する
◎株式投資する
◎馬券を購入する
◎宝くじを購入する

いや「すぐに使う」という選択肢もありますね。「借金返済にあてる」という回答もありえそうです。

いずれにしても,選択肢によって結果と,その結果が生じる確率がずいぶん変わってきます。大きなリターンが得られる選択肢は,生じる確率も小さくなります。つまり,結果の分散が大きな選択肢だということになるのですね。


リスクの整理

ひとびとがリスクをとることに関連する言葉には,いくつかのものがあります。整理してみましょう。

◎リスク志向(risk orientation):不確実な利益や損失に直面することに対して快を感じる程度
◎リスク態度(risk attitude):リスクとリターンの相対的な重みに個人差があること。あるいは,悪い結果を避けたり,よい結果を達成することに動機づけられる程度
◎リスク選好(risk preference): 物質使用や個人に対して身体的・精神的危害を伴う可能性のある犯罪行為など報酬はあるが何らかの損失の可能性がある行動や活動に従事する傾向。また,変化の大きさの利点に注意を向ける傾向。
◎リスク傾向(risk propensity):意思決定者がリスクを取ったり避けたりする傾向。また,損失,危害,失敗など否定的な結果が予想される行動をとる個人の状況横断的な傾向

リスクと性格

リスクテイキングに関する研究では,個人がもつパーソナリティや気質などの心理的な特性にも注目されることがあります。よく取り上げられる心理特性は,衝動性と刺激希求性でしょうね。

衝動性は,あまり深く考えることなく自月的に行動する傾向のことを指します。また刺激希求性は,多様で新規で,複雑な感覚や体験への欲求を抱き,そのような体験をするために身体的・社会的な危険もいとわない傾向のことです。

ビッグ・ファイブ・パーソナリティでいえば,衝動性は神経症傾向の下位側面,刺激希求性は外向性の下位側面に含まれています。

領域固有か一般特性か

この手の研究を行うときに問題となることのひとつは,ある人物がリスクをとる傾向が多くの場面・領域で広く認められるのか,ある領域だけで見られるのかということです。リスクをとる人というのは,お金に関しても人間関係に関しても,人生を考えるときにもリスクをとりがちなのか,あるいはお金に関してだけリスクをとるのか,という問題です。

もしも広くリスクをとる傾向があるなら,パーソナリティ特性ともそのまま関連がありそうですし,もしも領域固有なのであれば,あるパーソナリティ特性の持ち主が特定の場面でリスクをとる傾向につながる,といった組み合わせの効果(交互作用)が見られるかもしれません。

では,ビッグ・ファイブ・パーソナリティに注目して,パーソナリティ特性とリスクをとる傾向との関連をメタ分析で検討した研究を見てみましょう。こちらの論文です(Is risk propensity unique from the big five factors of personality? A meta-analytic investigation)。

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