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外向的な人は新型コロナに罹りやすい?

環境が大きく変わると,それまでは適応的だと思われてきた特徴が,不適応的になってしまうことがあります。

池の中におたまじゃくしが泳いでいると想像してみましょう。おたまじゃくしの個体によって,広い範囲を探索するものと,じっと同じ場所にとどまって探索しないものがいます。探索範囲が広い個体のほうが狭い個体よりも,多くの餌を手に入れる可能性がありますし,新しい世界へと踏み出していく可能性もあります。

ある日,突然その池に人間が現れて,半分に仕切ってしまいます。そして最初に卵が産み落とされた場所から遠いほうの池の半分は埋め立てられてしまいました。結果的に,探索範囲が広いおたまじゃくしの多くは死んでしまい,ずっと同じ場所にとどまっていたおたまじゃくしばかりが生き残ったのです。

何もなければ広い範囲を探索する特性は適応的なのですが,環境が大きく変わるとそれが「欠点」となってしまう可能性があるのです。


外向的な人

学生たちの授業の感想なんかを見ていると,内向的な人の中には「外向的な人になりたい」と考える人が少なくなさそうです。大学の授業でもグループをまとめるリーダーシップが求められ,就活でもコミュニケーション能力が求められる今の時代ですので,活動的で人づきあいが好きな外向性が望ましいと考えるのもよくわかります。

しかしコロナウィルス感染症の広まりは,外向性の適応に問題を投げかけたと考えることもできるのではないでしょうか。

ウィルスの蔓延は,集団の中で発生しやすいと言えます。外向的な傾向は,多くの人と接触する機会を高める方向に働くと考えられるからです。ウィルスを周囲に広める人(スーパースプレッダーなどと呼ばれます)が存在する可能性の高い集まりに参加する可能性も高く,また本人がそのような立場になる可能性もあります。

実際にこれまでの研究では,外向性の高さが人との社会的距離をとってウィルスに対処するという考えが低い傾向にあることが報告されています。コロナウィルス感染症の広まりによって交流が制限されると,外向的な人のほうがむしろストレスが多くなったり,自粛する中でむしろ人間関係を広く密に行っていく傾向があるかもしれません。

感染しやすい性格はあるのか

では,実際に外向的なパーソナリティ特性はコロナウィルス感染症の感染を促進させるようなことがあるのでしょうか。この論文を読んでみましょう(Personality correlates of COVID-19 infection proclivity: Extraversion kills)。

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