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ハムチーズサンド

サンドイッチの理想

ぼくのサンドイッチ観はアメリカにある。
ハタチの頃、ぼくはアメリカに居た。
ロサンゼルスの学校に通っていたのだけど、まぁ若い頃の話だし、色んな価値観の基礎になるものをおそらくはそこで培ったと思う。

ご存知のこととは思うが、海外、特に欧米人はよく食う。
ガタイがいいので当然だが、向こうでいう前菜で腹いっぱいになることもしばしばだ(高級店は知らない)
なので留学中には太った。
アホほど食ったあとにとんでもなく甘いデザートを食うのだから太らないほうがおかしい。

でもまぁ、あの乾燥した砂漠の気候の中で食うメシは旨い。
あの雰囲気では確かに米と味噌汁という気分にはならない。
フルーツや新鮮な野菜。そういったものが欲しくなる。
それとなんといっても肉だ。
自炊が基本なのでウォルマートなんかにもよく行ったが、基本的衣食に関しては安い。冷凍ものが多いが、それでもアホほど量が入ってるのが本当に安価で買えるから、1年ほどの暮らしで食うのに困ることは全くなかった。

学食みたいなのも学内にあって、朝と昼はそこで食うのだけど、そこでよく食ったのがサンドイッチの類いだ。
BLTが多かったが、こういったシンプルなサンドイッチもあった。
それが実に旨くて、ぼくのサンドイッチの理想型となっていったのだ。

具はあまりいらない

サンドイッチの具は何種類も要らない。
そんなことをいうとチェーン店の地下鉄あたりに叱られそうだけど、ぼくの理想は具は少ないのがいい。
別にパンの旨さを云々とかめんどくさいことは言わないけれど、実はぼくのちょっと珍しい(と言われる)食の好みの問題で結果として、そういったもののほうが好ましく思えるのである。

ドジャースタジアムのホットドッグ

滞在している時にドジャースタジアムへ何度か野球を見に行った。
バレンズエラなんてピッチャーがいた頃だ。
ドジャーススタジアムはピーナッツ売りが有名で、売り子のおじさんに手を挙げると、そこから実に見事なコントロールで放り投げてくれる。
じゃお金はどうすんだ?と思うけれど、そこは横の人や前の人に手渡しするのだ。

で、ピーナッツももちろんだが、ぼくが感銘を受けたのはホットドッグなのである。
なんの衒いもないごく普通のホットドッグで、温められて少ししっとりとしたパンに、アメリカにしては標準サイズのソーセージだけなのである。
そこにお好みでケチャップやマスタード、そしてオニオン&レリッシュ(ピクルスのみじん切り)を加えるのである。
後から聞いたのだけど、ここのホットドッグはMLBのキング・オブ・ホットドッグと呼ばれていて売り上げが他の球場と比較して頭抜けているらしいのだ。

もう本当に目から鱗というか、それまでの人生で食ったホットドッグとはいったいなんだったのか、と思うほど旨かった。
あまりに旨くて、ぼくは試合をほったらかして都合5本も食ったのだ。

ぬか漬けピクルス

再現しようとかではなく、今朝はハムサンドである。
普通のきゅうりもあったのだけど、ふとドジャードッグを思い出してピクルスを...なんてあるわけがない。
そこでぬか漬けのきゅうりを挟んでみた次第だ。
オーロラソースにチーズ、ハム、ぬか漬け、そしてマスタード。
シンプルである。
いや思い込みというのはこうまで脳を惑わせるかと思うのだけど、今日パンに挟んだぬか漬けきゅうりは、どう噛み締めてみてもピクルスとしか思えなかった。
いやいや、これは旨いわ。

ハタチの味わい

アメリカでの生活は乳母日傘で育ったぼくには衝撃的な出来事だった。
はじめは友達もできずホームシックで何度も帰ろうと思ったものだが帰るったって電車に乗ればすぐって所にいるわけではないから、もうこれは慣れるしかない。

楽しいことしんどいこと半々にあったけれど、もちろんとてもいい経験であったのには違いない。
ハタチというまだまだ未完成な頃だったからこそ感じられた喜びや驚き、そして辛さ悲しさ。
その中のひとつには学食のサンドイッチやドジャードッグがあるのだ。
恐らく今食べても、あの感動には及ばないのだろう。

それでもこんなサンドイッチを食べると、あの砂漠の街に気持ちは飛んでいくのだ。

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