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ソース焼きそばと彼の訃報

途中から茫然としてしまった

基本的にここで記事にするのは、ほとんどリアルタイムの料理で、出来上がって食う前に写真を撮り、それで食ってから記事にしている。
中華麺があったので、これを茹でてから焼いて焼きそばにしようと調理した。

その最中に訃報が届いた。

ぼくは若いころにレコード会社で仕事をしていた。
それまでしばらくヒットがなかった会社の邦楽部門を救ったのは「愛は勝つ」だった。
自慢話ではないが、ぼくはヒットの予感があった。
というのは所属事務所がかなり力を入れたのが分かったからだ。
こう言っては身も蓋もないが、ヒット曲は偶然にヒットすることは少ない。
タイアップや歌番組への露出、雑誌媒体への露出を絡めないと当時はヒット曲は生まれなかった。それは偏に事務所の力なのだ。
今のようにネットでダウンロードもなく、SNSで話題になるということもなかった時代の話だ。

ところがこの「愛は勝つ」に限ってはレコーディングから力が入っていた。
聴くと分かると思うが歌全般にコーラスが入っている。(最初聴いた時は「ん?ビリー・ジョエルかな」とか思ったけどね)
コーラスをやる人たちには当然その分のギャランティが必要になるわけで、それまで大したヒットのないシンガーソングライター(失礼)のシングルにかけていい予算はかなり超えていたはずだ。
加えて人気番組への出演なんかもあり、ぼくは放送前日に担当のレコード店に一斉にファックス(懐かしいね)を送り在庫の確保をお願いした。

レコード店は懐疑的で、まぁレコード会社だからな的な反応だった。
仲のいい担当のいるレコード店は何枚か追加発注をしてくれた程度だった。

そして放送の日。

翌日からレコード店からの電話が止まならなくなった。
在庫が切れたが注文しても入荷が随分先になる。何とかしてくれ。
ダブルミリオンの始まりだった。
CDは自社で生産しているわけではないから生産には限度がある。
ぼくはそれを見越してお願いをしたのだけどね。

狂乱の年末が終わったころ、ぼくは彼に会う機会があった。
短い時間だったが、ぼくは彼の歌の中で好きだった「愛は勝つ」ではない曲の感想を伝えた。少し他の話もしただろうか、それから年末年始と暑中見舞いは必ずくれていた。
結婚するときにもお祝いの葉書を送ってくれた。

ぼくは会社を辞め疎遠になってしまったが、「愛は勝つ」ともう一曲は事あるごとに脳裏を過ぎる歌になっている。

焼きそばの味もなんだか分からなくなってしまった。

(良ければ、この歌の思い出を書いた次の記事も読んでほしい。KANちゃんに捧ぐ)

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