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歌うひとのための「四月(Aprile)」

曲:F. P. Tosti/詞:R. E. Pagliara

対訳

Non senti tu ne l'aria
感じませんか、風の中に
il profumo che spande Primavera?
春が振りまく香りを
Non senti tu ne l'anima
感じませんか、心の中に
il suon di nova voce lusinghiera?
心誘う新たな呼び声の響きを

È l'April! È l'April!
四月が来た! 四月が来た!
È la stagion d'amore!
恋の季節が
Deh! vieni, o mia gentil
ああ おいで、やさし君よ
su' prati 'n fiore!
花咲く野へ!

Il piè trarrai fra mammole,
君の足はすみれの花の間を歩み
avrai su'l petto rose e cilestrine,
君の胸は薔薇色や空色に彩られるでしょう
e le farfalle candide
まっしろな蝶々たちは
t'aleggeranno intorno al nero crine.
君の黒髪の周りをひらり舞うでしょう

È l'April! È l'April!
四月が来た! 四月が来た!
È la stagion d'amore!
恋の季節が
Deh! vieni, o mia gentil
ああ おいで、やさし君よ
su' prati 'n fiore!
花咲く野へ!

歌詞について

イタリア語で「人生の四月L'aprile della vita」と言えば「青春」を指す。まさに若々しさと恋の予感に溢れた、明るい曲。
詞の前半が嗅覚や聴覚に、後半が視覚に訴えかけてくる。特に後半は「すみれ(色)」「薔薇色、空色」「白い蝶」「黒い髪」と、非常にカラフルである。
また「mammole」は特にニオイスミレを指し、強く甘い香りをも暗示している。ここで、前半で歌われる「春の香り」と、後半で歌われる「春の風景」が結びつく。

 *

歌い出しが修辞疑問文で、いきなり「Non」という否定語から入る。
和声の上でも、前奏から「色が変わる」部分。なんとなく流れてしまわないように歌いたい。

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第一連と第三連では、七音詩行と十一音詩行が交互に現れる。いずれもイタリア詩で頻繁に用いられる韻律。
以下に第一連を再掲する:

Non / sen/ti / tu / ne / l'a/ria
il / pro/fu/mo / che / span/de / Pri/ma/ve/ra?
Non / sen/ti / tu / ne / l'a/ni/ma
il / suon / di / no/va / vo/ce / lu/sin/ghie/ra?

(「/」は音節の切れ目。太字はアクセントの位置)

一行目と三行目が七音詩行で、二行目と四行目が十一音詩行。三行目は八音節だが、「字余り」とみなす。
二行目と四行目にはそれぞれ「spande」「voce」の後に句切れがあり、行前半が七音詩行をなしている。一行目や三行目のリズムとも呼応しつつ、よりゆったりした印象になる。

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第三連も基本的には第一連と同じだが、アクセントのリズムがわずかに異なる。

Il / piè / trar/rai / fra / mam/mo/le,
av/rai / su'l / pet/to / ro/se e / ci/le/stri/ne,
e / le / far/fal/le / can/di/de
t'a/leg/ge/ran/no in/tor/no al / ne/ro / cri/ne.

三行目のみ行頭にアクセントが置かれ、聴く者に「おや?」という感じを与える。

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リフレイン部分は七音詩行と五音詩行からなる。一行目と三行目は六音節だが、「字足らず」とみなす。
第一連や第三連に比べて音節数が少なく、たたみかけるような勢いがある。

È / l'A/pril! / È / l'A/pril!
È / la / sta/gion / d'a/mo/re!
Deh! / vie/ni, o / mia / gen/til
su' / pra/ti 'n / fio/re!

「mia」は本来「ミーアmi-a」と母音を区切って発音するが、ここでは韻律の関係で「ミァmia」と一音節になる(語内合音)。楽譜上でも一つの音符に割り当てられているので、発音に注意が必要。

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