segretoアートボード-1

歌うひとのための「秘密(Segreto)」

曲:F. P. Tosti/詞:L. Stecchetti

対訳

Ho una ferita in cor che gitta sangue,
私の心臓に傷があり 血が噴き出している
che a poco a poco mi farà morir.
その傷がもとで じわじわと死ぬだろう
Trafitta dal dolor l'anima langue;
苦しみに貫かれた 魂はやつれ果て
amo e il segreto mio non posso dir.
愛しているのに、その秘密を 言えはすまい

Bello come la luce a me daccanto
光るように美しい人を 私のすぐそばで
il segreto amor mio veggo talor.
秘めたる想い人を 時折見る
Ei passa e sento in me come uno schianto
その人が通り過ぎれば感じる 心が砕け散るほどの
un impeto di gioia e di dolor.
激しい悦びと 悲しみを

Dal primo giorno non ho mai sperato,
出会った日から 決して希望など抱かなかった
il segreto fatale ho chiuso in me.
宿命の秘密は 我が身ひとつに籠めてきた
Ed egli non saprà d'esser amato
そして彼は知るまい 想われているなどと
mi vedrà morta e non saprà perché.
私が死ぬのを目にしても 理由を知りはすまい

Eppur se il veggo aprir vorrei le braccia,
それでもその人を見れば この腕をひろげ
dirgli che l'amo e che il mio cor gli do.
伝えたい、愛していると この心をあげると
Vorrei fissarlo arditamente in faccia,
そのかんばせを 真っ直ぐに見つめたい
ma il cor mi trema e gli occhi alzar non so.
けれど心は震えて 目を上げられない

歌詞について

詩を単独で読むと、非常に内向的な内容である。
「歌唱」では聴き手の存在を意識することになるので、「私の好きな彼には到底言えないけれど、だれかこの心の叫びを聞いてほしい」というニュアンスに変化するように思う。

 *

全体が十一音詩行からなる。うち、偶数行は全て字足らず。

Ho u/na / fe/ri/ta in / cor || che / git/ta / san/gue,
che a / po/co a / po/co || mi / fa/ / mo/rir.
Tra/fit/ta / dal / do/lor || l'a/ni/ma / lan/gue;
a/mo e il / se/gre/to / mio || non / pos/so / dir.

(「/」は音節の切れ目、「||」は句切れ。太字はアクセントの位置)

ところどころ、詞のアクセントと音楽のアクセントがずれている。
たとえば、上掲の第一連第三行冒頭の「Trafitta(貫かれた)」は、韻律上のアクセントは二音節目の「fi」に付くが、小節の一拍目に位置する「Tra」が音楽上は強拍に当たる。
歌い手の苦しみやもどかしさが、このズレに現れているように思う。

 *

第一連と第二連は、すべて現在形で書かれている。
(第二連第二行の「veggo」は、「(私が)見るvedo」の古形)

第三連の前半二行は近過去形。「希望を抱かなかった」「(秘密を)胸ひとつに閉じ籠めた」という状態が、現在の苦しみにも影響を及ぼしていることが示唆される。
参考までに、近過去について伊和中辞典 第2版(小学館)巻末の解説を引用すると:

すでに完了した過去の行為や経験を,主に現在との関わりにおいて述べるのに用いられる過去時制.

第三連の後半は未来形。

第四連に登場する「vorrei」は「~したいvolere」の条件法現在形。
婉曲な依頼によく使われる表現だが、ここでは「できることならそうしたい(が、そうできる見込みは少ない)」というニュアンスを感じ取れる。

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