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2024年8月 質の良い論文検索方法

 大学院に入学して、春学期が終わりました。病院で勤務しながらの大学院生活はなかなかハードでした。しかし、家族や病院スタッフの理解やサポートがあり、どうにか乗り切ることが出来ました。今は一安心して、夏休み期間のゆとりある中で頭の整理をしています。

 今回は大学院での学びを踏まえて、「質の良い論文検索方法」をテーマとした記事を書きます。臨床においても研究においても、質の良い論文を探すことは研究、臨床において大事なステップだからです。臨床研究に興味のある理学療法士やアスレティックトレーナーの皆さんの参考になればと思います。

1. リサーチクエスチョンの設定

 論文検索の第一歩は、「明確なリサーチクエスチョンを設定すること」です。リサーチクエスチョンとは、研究を通じて解明したい疑問や課題のことを指します。これを明確にすることで、どのような情報を探すべきかが見えてきます。

 リサーチクエスチョンを考える際には、先行研究を読み込み、現在の研究状況や未解決の問題点を把握することが重要です。解決されているリサーチクエスチョンは過去研究を参考にすればよいです。一方、解決されていないリサーチクエスチョンは、自分の研究課題として選択することが出来ます。

2. 質の高い文献を探すためのデータベース選択

 次に、実際に文献を探すためのデータベースを選びます。理学療法、アスレティックトレーニング分野のデータベースとしては、以下の3つを使うことがオススメです。

  • PubMed:医学および生物学分野の文献検索に最適で、特に信頼性の高い文献が多く掲載されています。

  • Google Scholar: 幅広い分野の文献をカバーしており、引用数も確認できるため、文献の影響力を判断するのに便利です。

  • PEDro: 理学療法に特化したデータベースで、臨床研究や系統的レビューを探すのに役立ちます。

 他にもいろいろありますが、これらのデータベースで最低限の情報収集は可能です。注意としては、グーグルスカラーは日本語だと検索精度が下がります。逆に、英語で調べると原著論文が多くヒットします。英語翻訳も簡単な時代なので、基本的には英語で検索することをオススメします。

3. 文献の質を評価するポイント

 文献を探す際には、質の高いものを選別することが重要です。以下のポイントに注意して文献を評価しましょう。

  • 英語論文を選ぶ: 国際的に広く参照される英語論文は、質の高いものが多い傾向にあります。

  • インパクトファクターを確認する: 学術雑誌の影響度を示す指標で、高いインパクトファクターを持つ雑誌に掲載された論文は、質が高いと評価されることが多いです。インパクトファクターは、その雑誌の2年間に引用された論文の割合を計算したものです。インパクトファクターは「JOURNAL CITATION REPORT」というサイトで検索可能ですが、大学院などで登録されていないと利用が出来ません。無料でできる方法として、雑誌のサイトを確認する、グーグル拡張機能である「PUBMED IMPACT FACTOR」を使うことでおおよそのインパクトファクターを把握することは可能です。こちらは「JOURNAL CITATION REPORT」とやや数字が異なるので、おおよその把握として利用できるかと思います。


  • 引用数: Google Scholarで確認できる引用数も、論文の影響力を測る指標となります。引用数が多い論文は、それだけ多くの研究者に参照されていることを示します。

  • 発行年: 過去15年以内の論文を優先することで、最新の知見を得ることができます。


4. 効率的な検索クエリとキーワードの選定

 質の高い文献を効率的に探すためには、適切なキーワードの選定と検索クエリの工夫が必要です。特に、PubMedでは「MeSH(Medical Subject Headings)」を使うことで、より正確な検索結果を得ることができます。

 MeSHタームの活用は前回記事でも紹介した以下の動画をご参照ください


5. メタアナリシスの活用

 文献レビューを行う際には、メタアナリシスの活用が非常に有効です。メタアナリシスは、複数の研究結果を統合して分析するもので、研究の全体像を把握するのに役立ちます。基本的にはメタアナリシスのエビデンスとしての信頼度は高いと言われています。メタアナリシスを起点に、そこで引用されている原著論文を追跡することで、質の高い研究内容を探し出すことが可能です。

 メタアナリシスの評価の仕方はまた別の機会に記事にできればと思います。

まとめ

 以上が、大学院前期で学んだ質のよい論文の探し方についてです。大学院ではとにかく文献を読むことを指導されます。臨床家も多くの論文に触れ、エビデンスに基づいた医療を提供していく必要がある時代です。今日の情報を元に、質のよい論文を読んでみて頂ければと思います。

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