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メトロポリタン歌劇場 「ラ・ボエーム」2023秋
ニューヨーク滞在中、メトロポリタン歌劇場でオペラ「ラ・ボエーム」を観ました。
オペラは素人ですが、20代の独身時代、お給料をためて有名歌劇場の来日公演のチケットを買って何度か観に行きました。ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン、コヴェントガーデン、ミラノスカラ座etc・・・どれも夢みたいな時間で懐かしい。
NYのメトロポリタン歌劇場に来るのは30年振り、2回目。 夜のリンカーンセンターは華やかさを増して、昼間のマンハッタンの喧騒が嘘のようでした。
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リンカーンセンターにある煌びやかなガラス張りの建物は1966年創設。今はもうない旧歌劇場は、アメリカ自然史博物館を手掛けたJ・クリーブランド・キャディー(J. Cleaveland Cady)の設計で1883年にブロードウェイに建てられ、シアター・ディストリクトが発展する端緒となりました。
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エントランスを入ると、レッドカーペットが敷き詰められた豪華な階段が出迎えてくれます。ロングドレスを着飾った女性やタキシード姿の男性が、劇場に花を添え、気持ちがワクワク。 やっぱり欧米人はこういう服装が似合います。
勿論カジュアルな服装の方も。ウィーンの国立歌劇場には、舞台が半分くらいしか見えない最上階の安い立ち見席があって、音楽を勉強している学生がスコア片手に毎日のように通うと聞きました。開場時間になると上まで駆け上がって、マフラーを手すりに巻き付けておくのが場所取りのサインとか。オペラは文化だと実感します。
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螺旋状の階段を上った先に、レストランThe Grand Tierがあります。
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開演前にディナーを頂き、途中休憩の時には同じ席にデザートが用意されています。歌舞伎座みたいですね。
昔来たときは、高齢のご婦人が一人で食事をしていました。こんな華やかなところに一人でいるのは寂しくないかしらと気になったのですが、おそらく長年ご主人と通った常連の方なのでしょう。サービスする人が時折声をかけ、温かな雰囲気でした。
そういえばパリの定食屋さんでも、同じような風景を見ました。そこは前のお客さんが残したパンを、ぽいっと次のお客さん用のパンかごに入れてしまう庶民的なお店(でも美味しい!)なんですけど、店の主が帰っていく老婦人にショールを掛けてあげて、耳元で何か囁ていました。「外は寒いから気をつけてな。また待ってるからね」とでも言ったのか・・・パリもニューヨークも大都会ですが、こんな風景があって嬉しい。しばらくの間、私も寒さを忘れました。
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圧巻の歌劇場内部。
なんと6階席まであり、収容人数は3995名(内立ち見として約195名)
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シャンデリアは開演時刻になると、静かに上にあがっていきます。オペラ座の怪人みたい・・・というか、オペラ座の怪人がメトをヒントにしたのかしらん?
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ラ・ボエームでは、お針子のミミと詩人ロドルフォの切ないラブストーリーが、パリの屋根裏部屋で暮らす貧しい芸術家たちの青春群像とともに描かれます。さすがはメトという布陣で、可憐で最後は命が尽きるミミを歌ったアニータ・ハーティッグ(Anita Hertig)さんはウィーンでもミミを演じているほか、ムゼッタ役の経験もあるそうで、美しい声でした。アニータさんはルーマニア出身、他の主要なメンバーもロシア、ポーランド、アメリカなど多国籍な顔触れでした。
そのアニータさんが流感で出演できなくなったとき、前夜に蝶々夫人を歌ったクリスティーン・オプライスさんが急遽代役でミミを歌ったといいますから、トッププロの世界は凄い!
今回ラ・ボエームを観たかった大きな理由は、名匠ゼッフィレッリの演出だったから。1981年から色褪せることなく上演され続けている類稀な演出で観られて、本当に幸せでした!! 2023年は生誕100周年だったのですね。
別刷りのプログラムには表紙にスポンサー(giftとも表現)の名前がずらっと並んでいました。それも、制作に / プロダクションの再上演に / セットの刷新にと、細かく書かれています。ゼッフィレッリの演出だったら資金を提供するという方がいるのではないでしょうか。
お金を出した人には相応のベネフィットがあり、お金が動く仕組みを作っているのはニューヨークらしい。 1億円以上寄付した方のネームプレートもあって、桁違いの世界を見せつけられました。
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スイッチでON/OFFできる字幕装置。
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もし私がオーケストラのチェリストだったら、弾きたい曲が2つあります。そのひとつが、このラ・ボエーム4幕中のソロ。歌に寄り添って泣けるメロディーです。(ちなみにもうひとつは、ブラームスのピアノ協奏曲第2番の緩徐楽章のソロ)
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2023年の夏に亡くなったレナータ・スコットの舞台衣装が展示されていました。
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メトを彩った音楽家の顔写真
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ウクライナのアーティスト支援のパネル
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声がストラディヴァリウスと言われたレオンティーン・プライスの肖像と、古びた公衆電話
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終演後メトロのホームまでゾロゾロ歩くお客さんに混じって、楽団員もあっという間に出てきます。
コンセルトヘボウ(オランダ)でもヴァイオリニストが楽器を背負って自転車で通り過ぎていったし、地下鉄がストライキ中だったパリ管ではコンサートマスターが私たちのすぐ脇を歩いていたことも。 音楽家を身近に感じられて、ちょっと嬉しかった・・・
このチェリストさんは家まで歩いて帰るのかしら。
聴いたばかりのメロディーが頭のなかで鳴り続け、オペラの余韻に浸って幸せな帰り道でした。
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