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【おすすめ図書】好奇心を“天職"に変える 空想教室 (サンクチュアリ出版)

あきらめ方を知らずに生まれた
すべての人たちへ

(本体カバーより引用)

人は誰しも、人生のバイブルと言える本を持っているのではないでしょうか?私にとってはこの本が、何冊かある人生のバイブルのうちの1冊です。

自分がやっていることや自分の生き方に自信がなくなった時、この本を手にとって開くと、たとえどのページを開いたとしても、必ず胸にしみる珠玉の言葉が存在しているのです。

STEAM教育おすすめ図書シリーズ。今回は、植松努さん(植松電気専務取締役)著の「好奇心を“天職"に変える空想教室」を紹介します。

<こんな人におすすめ>
・自信を失いかけている人、何かを諦めそうになっている人
・夢ややりたい事が見つからずに悩んでいる人
・子育てをされている人

著書の植松さんは、北海道の赤平というところで町工場を経営されています。リサイクルに使われる電磁石を作るのが本業とのことですが、その傍らで、宇宙に飛ばすロケットを自費制作するなど、宇宙開発にも取り組んでいらっしゃいます。

なぜ、どのような想いで、植松さんは自身の工場で宇宙開発をしているのでしょうか。この本では、その理由が、ご自身の体験をもとに、語りかけられるようなやさしい言葉で綴られています。

正直、この本から学ぶことは多すぎて、書くことを絞るのはとても悩ましいのですが、私からは、STEAM教育の観点から共感したポイントを3つ紹介させていただきます。

【共感ポイント①】「お金がないと実現しない夢」は、自分の”夢”ではなく、誰かにしてもらう”サービス”

植松さんは、自分の夢や、やりたいことに対して周囲からかけられたネガティブな声に疑問を抱き「夢ってなんだろう?」と考えます。

そしてたどり着いた答えが、夢とは「今できないことを追いかけること」だと確信します。

「お金持ちになって良いものを買う」という夢に対しては、お金を払って良いものが買えるのは、「お金を持っているからではなく、どこかで誰かが作っているから」だとおっしゃいます。

「お金で買える夢は、夢ではなく誰かにしてもらうサービス」なのだ、と。

だから、いきなり誰かに「してもらう」と思わず、まずは自分で考えてやってみる。そうすると、できることが増えて、人にしてあげることができるようになるかもしれない。それは仕事になるかもしれない。「できなかったことができるようになること」が大事、と書かれています。

一昔前に比べても、かなり便利な世の中になりました。テクノロジーは進化し、世の中は既製品や便利なサービスに溢れ、自分で考えたり作ったりしなくても問題なく生きていける世の中です。

しかし、世の中が便利になっていくにつれ、子どもたちの手先はどんどん不器用になり、すぐに「面倒くさい」と言うようになりました。これは、私が科学実験教室で働いていた時に感じたことです。子どもたちは、ちょっと大変な作業があると、すぐに「面倒くさい」と言うのです。

しかし、本来、世の中の大半のことは面倒くさいのが当たり前なのです。その面倒くささに気がつき、どうにかできないかと考え、改善しようとしてくれた人たちがいるから、私たちは便利なくらしを営むことができているのです。

STEAM教育とは、物事の原理や仕組み理解し、それを活用して何かを創ることを学ぶ教育です。様々な技術や、材料や、手法を用いた”ものづくり”の教育とも言えます。

STEAM教育を通じて、子どもたちが、できなかったことをできるようになれば、買うものだと思っていたものが創れるようになれば、きっと植松さんのおっしゃる通り、その体験は、子どもたちの小さな自信となり、人に優しくすることができるようになるための種になるのではないかと考えます。

【共感ポイント②】”やりたいこと”を見つけるためには、感動する

豆電球を光らせたり、画面の中のキャラクターを動かしたり、ロボットを動かしたりできると、子どもたちはものすごく感動します。大人からすると、「え?そんなことで、そんなに?笑」と思うくらい、感動します。

この感動が大切なのです。

植松さんもこの本の中でこのようにおっしゃっています。

<引用>
やりたいことを見つけるためには、感動すればいいのです。
小さい頃のように「わー!すごい!」「やってみたい!」と心を震わせることができたら、”やりたいこと”はどんどん見つかります。

では、感動するためにはどうすればいいのでしょうか。
これはもう、とにかくたくさんの体験をすることしかないと私は思います。

頭で知っていることと、体験を通して知っていることは、同じ知ってるでも全く違います。

最近の子どもたちは、本やインターネットを通じて本当にたくさんのことを知っています。たくさんのことを知っている生徒ほど「それ知ってる」と言って知っていることを全力でアピールしたがります。

でも、例えば、電池に繋ぐと豆電球が光るということを「頭だけで知っている生徒」と、電池を使って豆電球を「光らせたことがある生徒」では、同じ知識を持っていても、その知識の価値がまるで違うのです。

たくさん体験する。そして、たくさん感動する。

点数ではかる成績のように、体験したことがすぐに何かの成果になって現れるということはないかもしれません。

しかし、体験によって生まれた感動が、やがて好奇心となり、チャレンジ精神となり、自らの興味に一歩を踏み出す勇気につながります。

【共感ポイント③】「どうせ無理」という言葉に出会ったら「だったらこうしてみれば」を考える

植松さんは、ご自信が過去に夢や将来やりたいことを伝えた相手から「どうせ無理」と否定された過去があり、この「どうせ無理」という言葉が非常に恐ろしい言葉だと訴えます。

「どうせ無理」という言葉は、人の自信を失わせ、可能性を奪ってしまう。
自信をなくし、可能性を奪われた人は、頑張れないから、生み出せないから、奪うようになる。

だから、世界から「どうせ無理」をなくせば、いじめや暴力や争いがなくなると思ったのだそうです。

植松さんにとっての宇宙開発は「どうせ無理」をなくすための手段なのです。そして「どうせ無理」をなくすために、誰もができる方法として「だったらこうすれば?」という言葉を推奨しています。

自分が失敗したときも、誰かが失敗したときも、人を責めずに考えてみてください。「なんで、失敗したんだろう?」「だったら、次はどうすればいいんだろう?」と。(抜粋)
今日から「どうせ無理」という言葉に出会ったり、この言葉が心の中にわいたときには「だったらこうしてみたら?」を考えてみてほしいのです。(抜粋)

私は、この「だったらこうすれば?」思考を身につける最高の教育がSTEAM教育だと考えています。以前、こちらの記事でも書いた通り、「できない理由を考えてしまっては成り立たない」のがSTEAM分野だからです。

本書の最後に植松さんは教育についてこうおっしゃっています。

教育とはなんでしょうか。
教育とは失敗の避け方や、責任の逃れ方や、要領のいい生き方を教えるためのものでしょうか。
とんでもない間違いですね。教育は「死に至らないよう、失敗を安全に経験させるためのもの」です。(抜粋)

私は、7年間、子どもたちと科学実験をする仕事をしてきましたが、初めは予想が外れることや失敗することを恐れていた子でも、「予想通りじゃなくていいんだよ」「失敗しても、その後どうすればいいかを考えればいいんだよ」という声がけを続けることで、どんどん変化する様子を見てきました。

そして、現代の子どもたちにとって、身近に「うまくいかなくてもいいんだよ」と言ってくれる大人がいることは、大人が思っている以上に大切なことなのだと身を以て感じてきました。

この本に書いてある、
・できないことをできるようにすること
・たくさん感動すること
・失敗しても「だったらこうすれば?」と考えること
を子どもたちに伝えるためにも、STEAM教育は素晴らしい教材になると思うのです。

動画紹介<TED✖️SAPPORO>

ちなみに、私が初めて植松さんのことを知ったのは、2014年、SNSでたまたま流れてきたTED✖️SAPPOROの動画を見たのがきっかけです。

本でも動画でも、植松さんは、小学生にもわかる易しい言葉を使っていますが、一つ一つの言葉が重く胸に響いて来るのは何故なんだろう?とずっと考えていました。

それは、植松さん自身が、自分の体験を通して、考えて、考えて、ぐるぐると考え続けて、たどり着いた言葉たちだからなのだと思います。

ぜひ、まだ見たことがないという方は動画も併せてご視聴ください。


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