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8/2に感想をくださったあなたへ

文化村での個展が8/7に無事終了しました😊
蔦屋書店での展示で知って以来チェックしていますという方が多くて、今回の個展に加えて前回の個展の感想も聞けて嬉しかったです。

さて、8/2に熱心にご覧になっていた若い男性の質問を文化村の職員さんから聞いて感動してしまいノートを久しぶりに!書こうと思った次第です。
その質問は、『この作家さんはお子さんがいるのですか?』というものです。
けっして子供の有無を聞かれて不愉快になったというわけではありません、うわ!もしかしてそのテーマをあの展示から読み取ってくれたのですか…!?という驚きです。質問の真意はわかりませんが、私の作品のテーマの一つである『母性』について過去の変遷に沿ってここに記したいと思いました。彼に届くと良いのですか…。

私が今の作風になった大きなきっかけがこの2011年の作品。

somewhere 2011

既に過去として私が手放した日々の思いや願いが今も何処かにあるのなら、それは風化の途中にあるだろう。既に朽ちているその姿自体でも留まって欲しい、無かったことになって欲しくない。
そんな制作動機で作った作品でした。

どうして土なのか?
それはどうして何に飲み込まれているのか?
生きているのか死んでいるのか?
過剰なまでの性的イメージは何の為に?

当時は大学3年生、課題として提出した際に投げかけられた問いに答える為に自分の抱いたイメージの源を探すことになりました。
闇雲にいろんな本を手に取った気がしますが、ヒントになりそうだったのは心理学です。フロイトはわかるようでわからないが素直な感想でした。
その中で運命的な出会いだったのがこの一冊。

古本屋でゲットしたこの装丁、素晴らしい…
わくわくする目次

ユング派の心理学者の河合隼雄先生を知るきっかけになったこの一冊が、その後の私の創作の羅針盤になったと言っても過言ではありません。
物語の構成、登場人物のアーキタイプとシンボルのユング派心理学者としての解釈と解説。童話や神話が荒唐無稽な夢物語ではなく現実社会に即したものであることが強く優しい語り口で綴られています。
私のイメージも同様に解釈できるものと思わせてくれたのが第二章のグレートマザー(太母)の箇所です。
そこから言葉を借りながら続けます。

父の生殖にあずかる意味が明確でなかった古代では母こそが生命の源であり、そのイメージは春に芽吹く大地と重ねられてきました。そして冬には植物は枯れて大地に還ることになる。
土こそが死と再生の母胎として考えられ、その機能が強調された地母神像が世界各地で作られていました。

奇形とも言える、乳房が沢山飾られたアルテミス像
出産文土器
安産体型の縄文のビーナス

鶏が先なのか卵が先なのかはわからないことですが、産み育てる母性には春と冬の関係のように死者を迎え入れる死の女神の側面も付与されました。
日本神話のイザナミが典型的な両面をもった地母神像と言えるでしょう。

イザナミをモチーフにした自作
根の国2017


小さい頃、母親が世界の唯一神のようであった記憶を持つ人は少なくないのではないでしょうか。
その機嫌に生存を握られている緊張感こそ、飲み込む母の気配であったように思います。

昔話の深層より

かつて口減らしで捨てられてきた赤子、現代にも少なくない児童虐待と殺害、人間だけに限らず危険を感じて子猫を食べてしまう母猫に至るまで、母性に戦慄させられてきた集合無意識の記憶がグレートマザー/太母の負の側面を作り上げているのではないかと思っています。

私個人もかつての子供として恐れ慄き、また女性であるゆえにこれを潜在的に抱えていることにも戦慄しています。
(これは身体の性差の問題ではありません。
女性性と男性性の混紡が個人の人格である限り、男性も無意識のうちに『育てる』という大義名分の元、他者を抱きしめ窒息死させていることも少なくないでしょう。)

母への戦慄が、今も私の存在感をおぼつかなくさせていること。そして母自身も同じ戦慄を抱え育ったこと。私も他者に同じ類の暴力を向ける力を孕んでいることの自覚が、自然物に飲み込まれる少女像を私に作らせていたのでした。

文化時代を問わず、個人それぞれの地獄と光の底には似たようなシンボルを描き出す可能性が横たわっているとユングは述べます。
その一つのイメージグレートマザー/太母を血と肉のマテリアルである土で作ることは私にとって理にかなっていました。
太母そのものをテーマとして作ることは最近減ってきたように思いますが、自然物に飲み込まれる血と肉の人物像を作り続ける限り生と死を包含したものであることは今もこれからも一貫しているでしょう。
一つ一つの作品の解説でここまで語ることは少ないですが、通底するコンセプトであるこのアーキタイプを予感した質問が『この作家さんはお子さんがいるのですか?』だったのだろうと思って感動してしまいました。見つけて気付いてくださってありがとう。
僕です!という方がいたらメッセージくださると嬉しいです笑
もちろん感想も嬉しいです😊

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