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想う〜Iris


想う〜Iris


我れのみやかく恋すらむかきつはた丹つらふ妹はいかにかあるらむー作者不明

「こんな風に恋をしているのは私だけなのでしょうか。杜若(かきつばた)のようなきれいなあの娘はどうなのでしょうか」
(現代語訳: たのしい万葉集より)

万葉集には杜若の和歌が7首収録されている。どれも切ない恋の歌である。

私が住む街には毎年6月頃にあやめまつりで賑わう公園がある。「あやめ」と付くが実際には湿地で育つハナショウブやカキツバタなどではないかと思っている。
(ちなみにアヤメは乾燥地で育つらしい)
おそらくアヤメ、ショウブ、カキツバタの区別がつく人はそれほど多くないのではないだろうか。

数年前に公園にスケッチに行った私も「あやめまつり」だからアヤメなのだろうと思い込んでいた。どれもアヤメ属に分類されるのでとてもよく似た姿をしている。

杜若を詠んだ和歌が切ない片想いの歌であるのは春から梅雨、季節が移り変わる頃に咲く美しい青紫色の花が切ない恋心に重なったのかな、と万葉の人々の心に思いを馳せてみる。

杜若には「幸運は必ず訪れる」という花言葉もある。飛んでいるツバメの姿に似ている、と古くから人々は感じていたようだ。

「想う」
2022 F10号
銀箔、岩絵具

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