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【裁判例メモ】商標権:審決取消訴訟(色彩商標:自他識別力(商標法3条1項3号、2項))(知財高判令和5年1月31日(令和4年(行ケ)第10089号))

1 「商標」とは

商標法第2条(定義等)
1 「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。
①  業として商品(※1)を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用(※2)するもの
②  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

※1 無償で配布される物品(販促物)など、商品該当性が問題となった事案(知財高判平成19年9月27日(平成19年(行ケ)10008号)(「東京メトロ事件」)など)
※2 「使用」 については、商標法第2条3項各号

商標法第2条1項は、文字・図形・色彩等の「標章」のうち、業として商品を生産等する者がその商品について使用する標章又は役務を提供等する者がその役務について使用する標章を「商標」として定義する。
なお、商標権侵害が認められるためには、被疑侵害者が単に標章を付すだけでなく、自他識別機能、出所表示機能を発揮する態様による商標の使用(いわゆる商標的使用(「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(同法第26条1項6号)))をしていることが必要である。

2 商標の構成上の分類

商標の構成上の分類は、一般的には、文字商標(文字だけで構成されている商標)、図形商標(図形のみで構成される商標)、記号商標(記号のみで構成される商標)、立体商標(立体的な形状で構成される商標)、色彩商標(色彩だけで構成される商標)、結合商標(文字・記号・図形・立体・色彩のうち、2つ以上の要素を結合して構成される商標)、音商標(音だけで構成される商標)、「政令で定めるもの」に区別される。

3 商標の登録要件

商標法第3条(商標登録の要件)
1 自己の業務(※3)に係る商品又は役務について使用(※4)をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
① その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
② その商品又は役務について慣用されている商標
③ その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
④ ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
⑤ 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
⑥ 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

※3 「他人が使用するために商標登録を受けることはできない。」「ただし、実際には、出願段階で自己使用証明書のようなものを求められることはなく、特許庁は出願商標が他人に使用させるものであるものであると決めつけるわけにもいかない。そのため、自己使用の要件は有名無実化し、他人に使用させる目的があることを理由に拒絶されたという例はないようである。」「商標審査基準においても、「指定役務に係る業務を行うために法令に定める国家資格等を有することが義務づけられている場合であって、願書に記載された出願人の名称等から、出願人が、指定役務に係る業務を行い得る法人であること、又は、個人として当該国家資格等を有していることのいずれの確認もできない場合」に商標を使用できない蓋然性が高いものとして、本項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないと判断する旨の拒絶理由の通知を行い、出願人が指定役務を行い得るか確認するとされている。」(茶園成樹編「商標法第2版」41〜42頁、有斐閣、2018年)
※4 将来使用しようとする意思のある商標を含む。

(1)概要

商標登録を受けるためには、①「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」(同法第3条1項柱書)であること、②自他識別力を有する商標であること(同法第3条1項各号に該当しないこと)、③商標登録を受けることができない商標に該当しないこと(同法第4条1項各号)、が必要である。
ただし、②同法第3条1項3号〜5号に該当する場合であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」(同法第3条2項)については、商標登録を受けることができる。

(2)「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」(同法第3条2項)

審査実務において、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、何人かの出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいう(特許庁編「商標審査基準(改訂第15版)」第2)。
そして、同商標審査基準において、3条2項該当性の考慮事由としては、① 出願商標の構成及び態様、② 商標の使用態様、使用数量(生産数、販売数等)、使用期間及び使用地域、③ 広告宣伝の方法、期間、地域及び規模、④ 出願人以外(団体商標の商標登録出願の場合は「出願人又はその構成員以外」とする。)の者による出願商標と同一又は類似する標章の使用の有無及び使用状況、⑤ 商品又は役務の性質その他の取引の実情、⑥ 需要者の商標の認識度を調査したアンケートの結果、が挙げられている。

(3)色彩のみからなる商標

色彩のみからなる商標について、知財高判令和2年6月23日(令和1(行ケ)10147号)は、「使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標が使用された期間及び地域、商品の販売数量及び営業規模、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情、当該商標やこれに類似した商標を採用した他の事業者の商品の存在、商品を識別し選択する際に当該商標が果たす役割の大きさ等を総合して判断すべきである。また、輪郭のない単一の色彩それ自体が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかを判断するに当たっては、指定商品を提供する事業者に対して、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。」と述べたうえ、「原告は、本願商標の色彩を車体の少なくとも一部に使用した油圧ショベルを長期間にわたり相当程度販売するとともに、継続的に宣伝広告を行っており、本願商標の色彩は一定の認知度を有しているとはいえるものの、その使用や宣伝広告の態様に照らすなら、本願商標の色彩が、需要者において独立した出所識別標識として周知されているとまではいえない。そして、本願商標は、輪郭のない単一の色彩で、建設現場等において一般的に採択される色彩であること、油圧ショベル及びこれと需要者が共通する建設機械や,油圧ショベルの用途とされる農機、林業用機械の分野において、本願商標に類似する色彩を使用する原告以外の事業者が相当数存在していること、油圧ショベルなど建設機械の取引においては、製品の機能や信頼性が検討され、製品を選択し購入する際に車体色の色彩が果たす役割が大きいとはいえないこと色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるべき公益的要請もあること等も総合すれば、本願商標は、使用をされた結果自他商品識別力を獲得し、商標法3条2項により商標登録が認められるべきものとはいえない。」と判示し、3条2項の適用を認めなかった。

4 事案の概要

原告は、女性用ハイヒール靴の靴底部分に付した赤色の色彩のみからなる商標(色彩商標)について、指定商品を第25類「女性用ハイヒール靴」として、商標登録出願(本願商標)をしたが、特許庁から拒絶査定を受けた。
原告は、拒絶査定不服審判請求をしたが、不成立とする審決(本件審決)を受けたことから、本件審決の取消しを求めた。
原告が主張する本件審決の取消事由は、本願商標の商標法3条2項該当性の判断の誤りである。

5 裁判所の判断

単一の色彩のみからなる商標の商標法3条2項の該当性について

(1)本願商標は、別紙1及びの記載から特定される色彩のみからなるものであり、女性用ハイヒールの靴底部分に赤色(PANTONE18-1663TP)とする構成からなるものである。
このように本願商標は、単一の色彩のみからなり、その色彩を付する位置を上記部分に特定した商標である。
(2)商標法3条1項は、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる旨を規定し、同項3号において、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格」を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」を掲げる。
 同号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされる趣旨は、このような商標は、商品の産地、販売地、品質その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことによるものと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。
 そして、商品の色彩は、商品の特性であるといえるから、同号所定の「その商品の・・・その他の特徴」に該当するものと解される。そして、商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美観を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的なものや商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきであり、特に、単一の色彩のみからなる商標については、同号の上記趣旨が強く妥当するものと解される。
 他方で、商標法3条2項は、同条1項3号に該当する商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる旨規定する。
 商標法3条2項の趣旨は、同条1項3号に該当する商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能を持つに至り、公益上の見地から不適当とされていた特定人による当該商標の独占的使用を例外的に認めるということにある。
 こうした商標法3条2項の趣旨に照らせば、自由選択の必要性等に基づく公益性の要請が特に強いと認められる、単一の色彩のみからなる商標が同条同項の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に当たるというためには、当該商標が使用をされた結果、特定人による当該商標の独占使用を認めることが公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力等を獲得していること(独占適応性)を要するものと解するべきである。
 なお、色彩のみからなる商標等を商標登録の保護の対象とした平成26年法律第36号改正附則5条3項には、不正競争の目的なく登録商標又はこれに類似する商標を使用していた者に継続的使用権を認める旨の規定があるが、これはあくまで「法律の施行の際に現にその商標の使用をしてその商品・・・に係る業務を行っている範囲内において」その商品等に関する商標を使用する権利を認めるにすぎず、こうした改正附則の規定があるからといって、色彩のみからなる商標登録において特定人による色彩の独占適応性を考慮することを否定する理由にならないというべきである。

本願商標の商標法3条2項該当性について

(1)本願商標の使用による識別力の獲得について

ア 本願商標の構成態様

(ア)本願商標は、前記2のとおりの構成からなる商標であるところ、その色彩は単一の色彩であり、その付する位置は靴底部分に特定されているが、別紙1に着色して示された図形の形状、輪郭のものに限定されるものではない。
 本願商標の色彩である「赤色」は、古くから「パワーや生命力を表す色」(乙3)として用いられているほか、女性用靴だけではなく衣類等のファッション分野で広く用いられてきた色である(乙4ないし8)。本願商標の色彩は、パントン社が提供する色彩標本のうち「PANTONE18-1663TP」と特定されているが、「赤色」であり、基本色の1つで(乙2)、色彩としてはありふれたものであって、特異な色彩であるとはいえない。また、「赤色」は、上記のとおり基本色の1つであり、「紫みの赤」、「黄みの赤」の色相も「赤色」と観念されるように(乙1、2)、「PANTONE18-1663TP」で特定される赤色と同系色の赤色とは厳密に識別することはできない(乙33)。
 また、本願商標で特定された色彩を付する位置は、女性用ハイヒールの靴底部分であるが、少なくとも、原告が原告ブランドを立ち上げた1991年後半より以前から、靴底に赤色を付した女性用ハイヒール靴の写真が複数掲載されていた(前記1ア及び)ことや、靴底に色彩を付すこと自体に何らかの障害があるとも思えないこと等からすると、色彩を付する位置として特異なものということはできない
 なお、原告は、前記第3の1アbのとおり、本願商標を付した女性用ハイヒール靴が人気を博する以前において靴底に赤色を付した女性用ハイヒール靴は、被告が指摘し得るもので3、4点にとどまるものであって、本願商標の構成態様は、ありふれたデザイン手法ではない旨主張する。しかし、デザイン手法の特異性を判断するに当たっては、刊行物の数が問題となるものではないし、前示のとおり、靴底に色彩を付すこと自体に何らかの障害があるとも思えないことに加えて、原告商品は、遅くとも1996年(平成8年)から日本において輸入販売が開始された(前記1ア)ものの、我が国における販売数量(女性用靴全体)が卸売価額で1億円を超え、飛躍的に伸びたのは2004年(平成16年)ないし2005年(平成17年)頃からであること(別紙2参照)等も勘案すると、それ以前に原告商品と類似の商品は市場にほとんど流通していなかった、あるいは、本件審決時に流通する原告商品と類似する商品は、原告商品の人気にあやかって利を得ようとしたものであるなどと決めつけることはできない(前記1イに示した靴底が赤色の女性用ハイヒールは、その販売価格帯や販売方法等も多種多様な上、独自のブランド名を付したものであり、一見していわゆる模倣品といえるようなものではない。)。もとより、商標法3条1項3号に該当する商標が、当該商標の使用の結果、自他商品識別力を獲得していることの立証責任は出願者にあって、こうした流通実態の立証責任は原告にあるというべきであるから、被告が挙げる事例の販売数量等について論難することは当を得ない。
(イ)以上によれば、本願商標の色彩及び色彩を付する位置は、いずれもありふれたもの、ないし普通のものであり、本願商標の構成に特異性は認められない。

イ 原告による本願商標の使用態様等

(ア)前記1及びにおいて認定した事実によれば、原告は、1991年後半に原告ブランドを創設し、原告ブランド名を使用した高級婦人靴等の製造販売を業とする原告フランス法人を設立してから以降、全世界に店舗を展開して、本願商標を靴底に付した高価格帯の女性用ハイヒール靴(原告商品)を販売して、数多くの著名人や芸能人に愛用され、また、日本でも、1996年(平成8年)頃から原告商品の輸入販売を開始し、路面店や高級百貨店等で販売をしており、ハイヒール靴に限っても、平成27年度以降は20億円を超える売上げを誇っており、また、数多くの雑誌、メディア等で、靴底の赤色が見るような角度の写真が多用されるなどして、原告商品は、「レッドソール」として取り上げられ、海外で芸術賞等を受賞するなどし、靴底が赤いブランドの靴は原告ブランドであると言及するブログ等の投稿があることからすると、ラグジュアリーブランドに関心のある女性を中心にした一定の需要者には、「靴底が赤い」女性用ハイヒール靴は原告ブランドを指すものと認識されているといえる。
(イ)他方で、原告商品は、中敷きに「ChristianLouboutin」(一部文字を図案化してなるもの)のロゴが付されており(前記1イ)、こうした文字の表示から、原告の女性用ハイヒール靴の出所が現に認識され、又は認識され得ることは否定することができない
 また、我が国においては、靴底が赤色の女性用ハイヒールは、原告商品以外にも少なからず流通しており(前記1イ)、女性用ハイヒールの靴底に赤色を付した商品形態を原告が独占的に使用してきたものと認めることはできない
 なお、原告は、前記第3の1イのとおり、原告商品以外の類似品に係る「取引の実情」に基づき、公益上の要請を考慮することは相当ではない旨主張するが、少なくとも前記2で示したような、公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)か否かを判断するに当たって、原告商品以外の類似品に係る取引の存在及びその状況を考慮要素とすることは当然のことといえるし、これらの類似品の取引の実情に原告が示唆するような特段の事情があると認めることができない点は、前記アにおいて説示したとおりであるから、原告の上記主張は採用し得ない。

ウ 本件アンケートの調査結果

 前記1のとおり、本件アンケートは、東京都、大阪府、愛知県に居住し、特定のショッピングエリアでファッションアイテム又はグッズを購入し、ハイヒール靴を履く習慣のある20歳から50歳までの女性を対象としたものであるが、本件アンケート結果によると、靴底が赤いハイヒール靴を見たことがないものを含め、本願商標を原告ブランドであると想起した回答者は、自由回答と選択式回答を補正した結果で51.6%程度にとどまるものである。
 女性用ハイヒール靴の需要者層は、全国の、主として20歳から50歳までの女性が中心であるといえるが、本件アンケートは、ファッション関係にそれなりに関心のある主要都市に居住し、特定エリアでファッションアイテム等を購入する女性を調査対象としたにもかかわらず、本願商標の認知度は半数程度にとどまっており、全国の需要者層にまで調査対象を広げると、本願商標の認知度はこれよりも下回ることは容易に推認されるところである。
 そうすると、本件アンケート調査結果に基づき本願商標に係る客観的な認知度を測ることの当否に係るその他の点につき判断するまでもなく、本件アンケートの調査結果から認定できる需要者における本願商標の認知度は限定的なものであるといわざるを得ない

エ 小括

 以上のとおり、本願商標が使用された原告の女性用ハイヒール靴の販売実績、宣伝広告、受賞歴等によれば、ラグジュアリーブランドに関心のある女性を中心にした一定の需要者には、本願商標が使用された女性用ハイヒール靴は原告ブランドを指すものと認識されていることは認められる
 しかし、本願商標の構成態様は特異なものとはいえないこと、原告が取り扱う女性用ハイヒール靴の中敷きに「ChristianLouboutin」(一部文字を図案化してなるもの)のロゴが付されており、これらの文字の表示から、原告の女性用ハイヒール靴の出所が認識され、又は認識され得ることは否定できないこと原告以外の複数の事業者が本願商標の色彩と同系色である赤色を靴底に使用した女性用ハイヒール靴を販売していたこと等の諸事情に加え、本件アンケートの調査結果から推認される需要者における本件商標の認知度は限定的であることを総合考慮すると、本願商標は、前記2で示したような、公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)と認めることができないものであることは明らかである。

(2)

 以上によれば、本願商標は、前記2で示したような、公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)と認めることができないものであるから、商標法3条2項が定める「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品」であることを認識することができるものに該当するものとはいえない
 原告の各主張は、これまで説示したところによれば、いずれも前記の結論を左右するものではない。


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