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商品化権使用許諾(キャラクターライセンス)契約書の雛型

有名なキャラクターとコラボしてグッズにするなど、タイアップ事業を計画している事業者の方からの相談が増えています。
そこで、本記事では、キャラクターに関する商品化権使用許諾契約書について、ライセンサー(権利者)側とライセンシー側の留意点を簡単に紹介します。
なお、下記の雛型は、基本的な条項について、留意点を説明しやすいように記載したものであり、契約書は、実際の取引に応じて作成する必要があります。そのため、雛型をそのまま流用することは避けていただくようお願いいたします。

雛型

キャラクターライセンス契約書

A株式会社(以下「甲」という。)及びB株式会社(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し、甲が著作権その他知的財産権を有するキャラクターの利用を許諾するにあたり、以下の通り契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(本件キャラクター)
 本契約において、本件キャラクターとは、甲が著作権その他知的財産権を有する以下各号のキャラクターデザインをいう。
① 【キャラクター名】
② 【キャラクター図】(別紙●)

第2条(利用許諾)
1 甲は、乙に対し、次に定める内容で本件キャラクターを利用することを許諾する。
(1)利用目的:【乙による●●の販促】
(2)ライセンスの種類:非独占的通常使用権
(3)許諾範囲:本件キャラクターを利用目的の範囲内で本件キャラクターを複製、翻案、頒布及び公衆送信する行為
(4)許諾地域:日本国内
(5)許諾期間:2022年●月●日から2022年●月●日
(6)ライセンス料:●万円(税込)
2 甲は、乙に対し、乙による本件キャラクターの利用が許諾の範囲を超えない限り、本件キャラクターに係る著作者人格権を行使しないものとする。

第3条(対価)
 乙は、甲に対し、第2条1項6号に定める本件キャラクターのライセンス料を、【●年●月●日までに、】甲が別途指定する口座に現金振込みをする方法によって支払うものとする。振込手数料は、乙の負担とする。

第4条(原画データの提供)
1  甲は、乙に対し、乙が利用目的を達成するために必要な場合には、本件キャラクターの原画データ(以下「本件原画データ」という。)を提供又は貸与することができる。
2 乙は、利用目的を達成するために必要な範囲において、本件原画データを複製することができる。
3 乙は、本契約が終了した場合又は甲の指示がある場合、甲の指示に従い、本件原画データ及び本件原画データの複製物を直ちに返還、破棄又は消去する。

第5条(事前承認)
1 乙は、本件キャラクターの利用を行う場合、当該利用の内容、利用媒体、利用態様、デザイン、レイアウトその他甲の指定する事項について、事前に甲の書面による承認を得なければならない。
2 乙が前項に違反した場合、甲は、乙に対し、本件キャラクターの利用行為の全部又は一部を差し止めることができ、これによって乙に発生した損害につき一切責任を負わない。なお、本項の定めは、甲による本契約の解除及び損害賠償請求を妨げない。

第6条(著作権者の表示)
 乙は、本件キャラクターを使用する場合、甲の指定する著作権者表示を甲の指定する位置に表示させるものとする。

第7条(知的財産権)
 本件キャラクターに係る著作権(著作権法27条及び28条に定める権利を含む。)その他知的財産権は、全て甲に帰属する。

第8条(第三者の権利侵害)
 乙は、第三者が本件キャラクターに関する権利を侵害し又は侵害するおそれがあることを知った場合若しくは第三者から本件キャラクターに関して権利侵害の請求を受けた場合、直ちにその旨を甲に対して通知し、甲と当該侵害を排除するための措置を協議した上で、甲が決定した措置に協力しなければならない。

第9条(注意義務)
 乙は、本件利用権の行使にあたり、本件キャラクターの有しているイメージ並びに甲の社会的評価、名誉及び信用を損なうことがないように十分な注意を払わなければならない。

第10条(再許諾の禁止)
 乙は、甲からの事前の書面による承諾がない限り、本件キャラクターに関するライセンスを第三者に再許諾してはならない。

第11条(権利義務の譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の事前の書面による承諾を得ない限り、本契約により生ずる一切の権利義務(債権及び債務を含む)の全部又は一部を第三者に譲渡し、承継させ、又は担保に供してはならない。

第12条(秘密保持)
1 甲及び乙は、本契約により知り得た相手方の業務上、技術上その他の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾を得ずに第三者に開示、漏洩してはならず、また本契約の履行の目的以外に使用してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する情報は、秘密情報に含まれない。
①開示を受け又は知得した時点で、自己が既に保有していた情報。
②開示を受け又は知得した時点で、既に公知となっている情報。
③開示を受け又は知得した時点で、自己の責によらずに公知となった情報。
④正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に入手した情報。
⑤相手方から開示された秘密情報によることなく、自己が独自に開発・取得した情報。
2 甲及び乙は、前項の定めにかかわらず、法令等に基づいて行政機関又は裁判所等の命令により開示が強制された場合には、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、相手方の秘密情報を開示することができる。ただし、この場合、その旨を相手方に通知するものとする。
3 本条の定めは、本契約の終了後も3年間、有効に存続する。

第13条(契約の解除等)
1 甲又は乙は、相手方が次の各号のいずれか一つに該当したときは、何らの催告その他の手続きを要することなく、本契約の全部又は一部を解除することができる。
①手形又は小切手の不渡処分を受ける等、支払停止又は支払不能の状態に陥ったとき。
②監督官庁より営業の取消、停止等の処分を受けたとき。
③第三者より差押、仮差押、仮処分を受けたとき。
④破産、特別清算、民事再生手続及び会社更生手続の申し立てを受け、若しくは自ら申し立てるとき、又は解散決議をするとき。
⑤合併、会社分割又は事業の重要な部分を譲渡したとき。
⑥重大な法令違反があったとき。
⑦前各号の恐れがあると認められるとき。
2 甲又は乙は、相手方が本契約に定める条項に違反したときは、相当期間を定めてその是正を催告し、当該相当期間内に当該違反が是正されないときは、本契約の全部又は一部を解除することができる。
3 前項の場合、本契約を解除された当事者は、解除によって解除をした当事者が被った損害のすべてを賠償する。

第14条(期限の利益の喪失)
甲又は乙に、前条第1項各号のいずれかに該当する事由が発生したときは、当該当事者は、本契約により生じた相手方に対する一切の債務について期限の利益を喪失し、直ちに相手方に弁済しなければならない。

第15条(損害賠償)
甲又は乙は、本契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、相手方に対してその損害を賠償しなければならない。

第16条(有効期間)
本契約の有効期間は、●年●月●日から●年●月●日までとする。なお、期間満了の3か月前までにいずれの当事者からも書面による契約終了の意思表示がなされない場合、本契約は同条件にて自動的に1年間延長され、以後も同様とする。

第17条(残存条項)
本契約が、解除又は期間満了により終了した後においても、第12条3項、第15条及び第20条の規定は、なお有効に存続するものとする。

第18条(反社会的勢力の排除)
甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己又は自己の役員若しくは経営を実質的に支配している者が現在及び将来に亘って次の各号のいずれか一つにも該当しないことを表明し、確約する。
①【略】
②【略】
③【略】
2 甲及び乙は、相手方が、前項の確約に反したことが判明した場合には、相手方に対して何ら催告することなく本契約を解除することができる。
3 前項により甲又は乙が本契約を解除した場合、当該解除に伴い相手方に生じる損害について一切の賠償責任を負わない。
4 第2項により甲又は乙が本契約を解除したことによって、解除をした当事者に損害が生じた場合、解除された者は、当該解除をした当事者の被った損害を賠償をしなければならない。

第19条(準拠法)
本契約の準拠法は日本法とする。

第20条(合意管轄)
本契約に関する裁判上の紛争が生じた場合には、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第21条(協議)
本契約に定めのない事項及び疑義を生じた事項については、甲乙誠意をもって協議し、これを解決する。

以上、本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。

   年   月   日

ライセンサー側の注意点

◆ポイント
ライセンサーとしては、契約の目的と照らして、ライセンスの内容が必要以上に広範な内容となっていないか、に留意する必要があります。

第2条 利用許諾

ライセンスの内容を定める条項ですので、すべてに注意するべきですが、特に、「利用目的、許諾範囲、許諾地域、許諾期間、ライセンス料」については、注意するべきです。
「利用目的」については、ライセンサーの予想外の目的でキャラクターを使用されないよう、ミーティングなどで協議していた目的と一致しているかを確認し、異なる場合には、できる限り詳細に記載するなど修正する必要があります。
「許諾範囲」については、キャラクターライセンスの根幹をなすものです。本件キャラクターについて、予定している利用目的に照らして、不必要な行為が含まれていないか、確認する必要があります。例えば、公衆送信する行為が含まれている場合には、インターネット上でキャラクターを利用される可能性があります。なお、禁止事項に関する条文を追記し、消極的に許諾範囲を定めることも考えられます。
「許諾地域」については、日本国外の地域が含まれていないか、ミーティングなどで協議していた地域(例えば、福岡限定で許諾製品を発売すると協議していたにもかかわらず、許諾地域には九州と記載されていることが考えられます。)と一致しているかを確認し、異なる場合には修正する必要があります。また、他のライセンシーに同様のキャラクターをライセンスをしている場合には、当該ライセンシーの契約内容と齟齬がないか、確認する必要があるでしょう。
「許諾期間」についても同様に、ミーティングなどで相談していた範囲と一致しているか、確認する必要があります。
「ライセンス料」については、雛形のとおり固定の額で請求する場合と売上に応じたランニングロイヤルティで請求する場合があります。
売上に応じたランニングロイヤリティで請求する場合、許諾製品の製造数量や販売数量などの報告書の提出を要求し、報告書に記載の数量に応じてライセンス料を計算する必要があるでしょう。また、前払金を設定したり、最低保証金額を設定したりすることも検討する必要があります。

第5条 事前承認

ライセンサーとしては、自身のキャラクターがイメージと違う形で利用されることを防ぐ必要があります。そのため、雛型では、ライセンシーに対して、キャラクターの利用を行う場合、利用態様やデザインなどについて事前に承認を得る義務を規定しています。
もっとも、事前承認は、ライセンサーにとっては安心ですが、許諾を得る手続きに手間が掛かると、ライセンシーにとって抵抗感が生まれますので、両者にとって手間だと感じない設計を目指すことが望ましいでしょう。

第6条 著作権者の表示

ライセンサーとしては、著作権者表示を許諾製品などに付すことによって、ライセンサー自身の知名度や認知の向上につながりますので、忘れずに記載しましょう。
どのような表示にするか、どこに表示するか、については、キャラクターを利用する媒体や製品によって表示可能な範囲が異なりますので、注意が必要です。

第7条 知的財産権

キャラクターライセンスにおいては、ライセンサーにキャラクターの知的財産権が帰属すると考えられますが、念のため確認した方が良いでしょう。

第10条 再許諾の禁止

本条項は、ライセンシーに対して、ライセンスの対象となっている権利について、ライセンシーから第三者に対して許諾を与えること(再許諾)を禁止するものです。キャラクターライセンスにおいて、再許諾が予定されていない場合は、禁止しておくことが無難であると考えられます。

その他

ライセンサーとしては、キャラクターライセンスの対象が商品の販売であれば、ランニングロイヤルティ方式を採用している場合、いつまでも商品の販売が行われないとライセンス料が発生しない事態が生じ得ます。そのため、ライセンシーに対して、一定期間内にライセンス商品を販売をする義務を規定することも必要でしょう。
また、ライセンサーとしては、許諾製品について、ライセンシーにキャラクターと関係のない損害が生じた場合や、キャラクターと関係のない第三者の権利侵害などが生じた場合に、責任を負わない旨の免責規定を設けることが望ましいでしょう。
表明保証を規定する場合は、「キャラクターが第三者の知的財産権を侵害していないこと」について、ライセンサーの「知る限り」侵害していないことを保証するなどとして、責任を負う範囲を限定することが望ましいでしょう。

ライセンシー側の注意点

◆ポイント
ライセンサー側としては、事業の計画に照らして、本契約のライセンス内容によってそのビジネスを実施することができるか、を意識することが重要です。

第2条 利用許諾

「利用目的」については、いざ販促などを行うにあたって目的外利用とならないように、キャラクターを利用する目的を網羅的に記載する必要があります。
「許諾範囲」についても、予定の利用目的や態様に照らして、必要な行為が含まれているか、確認する必要があります。例えば、インターネット上で販促を行う場合には、公衆送信する行為を記載する必要があるでしょう。
「許諾地域」については、事後的に地域を拡大する場合には、改めて覚書などを締結する手間が生じますので、利用する可能性のある地域については記載するように交渉することが望ましいと考えられます。
「許諾期間」については、予定期間が正確に記載されているか、延長する可能性がある場合には、延長できる文言が記載されているか、を確認する必要があるでしょう。
「ライセンス料」については、売上に応じたランニングロイヤルティとする場合にはより注意が必要です。ロイヤルティの金額は当然重要ですが、前払金や最低保証金の金額設定が予想されるロイヤルティよりも明らかに高額である場合があり得るため、留意する必要があります。

第5条 事前承認

事前承認は、利用の都度、ライセンサーの許諾を得る手続きが必要となりますので、事業進行に影響が生じる可能性のある条項です。ライセンシーとしては、事前承認の期間を定めることや、期間までに承認がなされない場合のみなし承認の規定を設けるなど、できる限り事業進行に影響が生じない内容とすることが望ましいでしょう。
また、事前承認に違反した場合の対応について、差止めを受けてしまうと、事業進行に与える影響が大きいため、段階的な措置とするように修正を求めることも考えられます。

第10条 再許諾の禁止

ライセンシーとしては、再許諾を予定しており、再許諾先も既に決定しているのであれば、改めて覚書などを締結することは手間になりますので、再許諾、再許諾先についての合意を予め取得しておくことが望ましいでしょう。

その他

ライセンシーとしては、対象キャラクターが第三者の知的財産権などを侵害していないことを保証してもらうために、ライセンサーが【本契約を締結する権限を有していること】、【対象キャラクターが第三者の著作権などの知的財産権を侵害していないこと】などについて、保証する条項を追記してもらうことが望ましいでしょう。

まとめ

以上の留意点は、キャラクターライセンス契約の留意点を簡単に説明したものであり、キャラクターライセンス契約には、その他にも注意すべき点が多数存在します。キャラクターライセンス契約を締結する場合は、「取引内容と契約内容が合致しているか」「この契約内容でビジネスの目的が達成できるか」「必要な条項は記載されているか」など検討する事項は多岐にわたります。
そのため、専門家の助言を受けながら契約を締結することが望ましいでしょう。


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