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航空管制官になって良かったこと8選


航空管制官になるメリット

「航空管制官になって具体的に何が良かったのか?」

元航空管制官だった私の個人的な意見ですが、管制官を志されている方の参考になるかなと思い、今回の記事を執筆することにしました。

今回の記事で伝えたいことは、航空管制官になりたいのなら一度はチャレンジしてみる価値はある、ということです。

「チャレンジに成功して管制官になったらこういうメリットがありますよ」

というものを元航空管制官である私が8つほど紹介したいと思います。

これを読んでもらって皆さんの試験のモチベーションが少しでも上がれば嬉しいです。

休みが多い

まず最初に航空管制官は休みが多いです。

これが管制官がホワイトだと言われる所以かもしれません。

Twitterでも休みに関するツイートの反応は良かったです。

具体的には4日働いて2日休みの6日1セットのサイクルで仕事します。

民間勤めの方からすると「ずるい!」と思われるかもしれませんが、
すみません、事実です。

私が働いていた官署では夜勤があったので、

早番→早番→遅番→夜勤→明け→休み

このようなサイクルをループしていました。

夜勤明けの日は朝の8:30に解放されていたので明けの日はほぼ休みみたいなもんです。

そして夜勤シフトがある官署だと毎月3連休があります。

これが結構助かるんですよね。

3連休に有給休暇をくっつけて4,5連休にして海外旅行に行ったり、自分の好きなことを勉強したり、家族と遠出したりと、時間があるので色々できます。

私のいた官署は有給申請はほぼ希望通りに通りましたし、他の官署の同期も休みに関しては融通がきくと言ってました。

休みが多いので自由時間に人生の幅を広げる活動ができるのは航空管制官の強みです。

残業がほぼない

これも自由時間が多いことの根拠なんですが、事務室や委員等のお仕事を担当してない限りは

基本的に残業はありません

というのも管制官は勤務時間が過ぎたら他の管制官と交代するからです。

官署ではクルーが何組かあり、その何組かのクルーで勤務をぐるぐる回していきます。

例えばクルー1が早番だとしたら、遅番でクルー2が交代に入り、夜勤でクルー3が交代に入り、クルー4がまた次の日の早番に入る

といった感じです。

上記の例ではクルー1は早番のトラフィックを捌いたら勤務終了なので15時くらいにお家に帰れます。

帰ろうとしたら上司に仕事を振られて残業確定!阿鼻叫喚!みたいな地獄絵図もありません。

この残業の少なさも民間企業では珍しいことかもしれません。

宿泊費&航空券が安い

個人的にこのメリットは強く推したいです。

管制官はシフト勤務なので休みの日が平日であることが多いです。

家族との時間を取りたい人にとってはこれはデメリットになるかもしれませんが、独身の方にとっては美味しいメリットです。

平日だとスーパーや娯楽施設がとても空いてます。

加えて宿泊費と航空券が非常に安いです。

私は旅行が好きだったので、ホテル代金をいかに安く抑えるかに命をかけていたんですが、平日だと土日に比べて1.5~2倍ほど安いんです。
(金曜日は平日ですが高いので注意)

そして実際に宿泊するホテルもめちゃくちゃ空いているので、朝食なども静かにゆっくり食べられます。

航空券に関しても土日だけでなく、平日のフライトを選べるのでチケット価格の選択肢が広がります。

「土日のこの便だと高いんだけど、平日のこの便は安い!」なんてことがskyscannerを見ていれば度々あります。

こんな感じで平日に休みをとると、移動費や宿泊費が安くなりかなりお得です。

毎週海外旅行に行っている猛者もいましたが、それだけ休みの取りやすさは他の民間企業に比べて頭ひとつ抜けているということをお伝えしたいです。

あと人が働いている時に休めるので、結構優越感に浸れますよ。笑

社会的信用がある

これは家や車を買ったりする時にローンを組みやすいという意味もありますが、それだけではありません。

不動産賃貸契約、クレジットカードの審査にも通りやすいです。
(一度も落ちたことありません。)

結婚する際も、お相手の親御さんに対して「しっかりしている」という印象を与えられ、結婚の承諾をもらいやすくなるでしょう。
(ここは個人の主観ですが。笑)

仮に航空管制官を辞めることになったとして、次の転職先を探す際も、面接の際に面接官の方から突っ込んで話を聞いてもらえます。

「国土交通省」「国家公務員」「航空管制官」

やはりこれらのワードには一定の社会的信用なるものが含まれています。

パイロットと話せる

これは飛行機好きの方にはたまらないでしょう。

人生の中でパイロットと対空通信で話せる人は果たして何人いるでしょうか?

これはいうまでもなく少数であることは間違いないです。

つまりはパイロットと会話する経験はかなり希少価値が高いということです。

ここで意味することは

"仕事上で会話する"

ということです。

航空に関する知識をもったプロフェッショナル同士 (パイロットと管制官) が乗客を安全に目的地に運ぶために幾度のコミュニケーションを交わします。

その過程で管制官はパイロットに対して臨機応変に的確な指示を発出します。

はたから見ると、管制指示と復唱の反復を行っているにすぎないと思われるかもしれませんが、面白いことに仕事をしていると、たまにパイロットの意図していることがわかる瞬間があります。

・どこかショートカットしたいのかな?
・レフトにデビエーションしたいのかな?
・高度制限守るの厳しいかな?
・トラフィックインフォ欲しいのかな?

なんてことが、パイロットの話し口調や雰囲気から、直接聞いてなくてもなんとなくわかる時があります。

具体的にリクエストされていないのに、パイロットの意図を汲み取って管制指示を出してあげると

「サンキュー!」

とパイロットから小気味良い返答があります。

この瞬間は管制官はとても嬉しいんですよね。

「管制官してて良かった!」と心から思う瞬間です。

パイロットの心のうちを読みながら会話することができるのも、この仕事ならではの魅力なんです。

航空機に詳しくなる

これはこの業界に入る前まではメリットだと思っていなかったことですが、航空機に詳しくなると世界が広がり、プライベートでもメリットが多いです。

まずは管制官が仕事する上で知っておかなければならないのは「型式」です。

皆さんは

B787、A320、A330

と聞いて何を想像するでしょうか?

私は管制官になるまでは航空機について全く興味がなかったので、もしこの仕事をしていなかったら答えられなかったと思います。

なんとなくのイメージですが、

B787
・エンジンの燃費が良くて静か
・客室内も静か
・スピードは早い方
・機材が新しい
・エンジン後部がギザギザ
・ヘッドアップディスプレイ
・客室内の電子カーテン

A320
・シートピッチ狭い
・機体がコンパクト
・航空券が安い
・neo型は燃料効率良い

A330
・中型ワイドボディ
・国内航空会社では採用無し
・スカイマークが一時期採用(現在終了)
・双発機としては大きいサイズ

上記は一部ですが、航空機の「型式」だけでざっとこれだけの情報が読み取れます。

これができるとどうなるでしょう?

まずは空港に行ったときに飛行機を見るのが楽しくなります。

加えて、私の場合は旅行で予約する航空機の詳細を見るようになりました。

「予約した航空機、B787だから結構新しめの内装なのかな」

「ベトジェットだとA320だからシート狭いけど、エアアジアはA330だから3列シートで広々使えるな」

このようにプライベートでも飛行機について興味をもって考えるようになりました。

航空機の「型式」について興味をもつことで、知らなかった世界を見る一例を紹介しましたが、これ以外にも「世界の航空会社」「全国の空港」についても自ずと興味が広がっていきます。

英語で仕事ができる

これも日本の職場では珍しい部分です。

管制官は基本英語を使うお仕事なので、英語好きの方が多いです。

おそらく航空管制官採用試験を受験される皆さんも英語が好きな方が多いのではないでしょうか?

航空管制官になると、海外のパイロットや米軍機のパイロットと交信する場面が出てきます。

なのである程度の英語力は必要になってきます。

それに加えて、米軍や中国などとの管制業務に関する取り決めが記されている「協定書」を読み解くのにも英語を使います。

スピーキング・リスニングだけではなく、リーディング力も必要ということですね。

また、日本の航空管制官は業務を継続する条件として、「レベル4」という英語の技能試験をクリアしていなければなりません。

なので定期的に英語の試験を受ける必要があるんです。

英語に全く興味がなくて管制官になる方は少ないと思うので、
「英語を仕事で活かせる」
という点は多くの方にとってはプラスだと思います。

「すごい!」と言われる

日本では初対面の方と会話をするときに、よくお仕事のお話になりますよね。

そこで

「お仕事何してるんですか?」

と聞かれた際に

「航空管制官してます」

と答えると、大体の方が

「すごいですね!」

と興味をもってくれます。

これは私たちの先代の航空管制官の方々が積み上げた、「ホワイトで聡明なイメージ」があるからだと思います。

あとは英語と対空通信と頭脳を使うお仕事なので「難しいお仕事」というイメージもあると思います。

そういう印象もあってか、これは初対面の人と会う時の「つかみ」としてはかなり有効だと思います。

一般の方からすると航空管制官に会うことは少ないので

「具体的にどういうお仕事なんですか?」

とその後も興味深々で聞いてくれることが多いです。

私個人の具体的なエピソードとして

ある休みの日にバーで友人とお酒を飲んでいたのですが、

そこで近くの席に座っていた男性が話しかけてくれたんです。

その男性と仕事の話になったときに、とても驚いた様子で嬉しそうに管制官のお仕事の内容について聞いてくださいました。

個人的に驚いたのは、その男性はお医者さんだったんです。

医療のエキスパートであるお医者さんとプライベートで仲良くお話しすることはなかなかできない経験だったので、とても嬉しかったのを覚えています。

結局その後も連絡を取り続ける仲になりました。

これはあくまで一例ですが、航空管制官はレアな職業だけに、人に興味をもたれやすいのは事実です。

これをメリットととるかデメリットととるかは人それぞれだと思います。

しかしながら社会人として、初対面の方と会う時やあるコミュニティに属する時でも「管制官」というだけで一つのアイデンティティを確立できるので、なかなか便利な肩書だと感じます。

終わりに


いかがだったでしょうか。

航空管制官というお仕事に対して少しは興味が湧いた方もいるんじゃないでしょうか?

このnoteでは今後もこんな感じで管制官のあれこれを綴っていこうと思います。

今後は、「航空管制官になるデメリット」「航空管制官のお金事情」なんてのも皆さんが気になるところだと思うので近々記事を書こうと思います。

※追記(2023/11/14)
上記のテーマについて執筆しましたので興味のある方はどうぞ。
「お金事情」については個人情報のこともあり、申し訳ないですが有料noteにさせていただいております。

今回の記事を読んで、「自分も航空管制官になってみたい!」と思われた方は採用試験にもチャレンジしてみてください。

ではまた次の記事でお会いしましょう。


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