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『なぜ歴史を学ぶのか』(リン・ハント著、長谷川貴彦訳、岩波書店)

専門書としては物理的に薄い本である。ただ、凝縮された文章だからなのか、抽象的でよくわからない単語も多かったという印象を受けた。

例えば「文化的な意味」というフレーズ。もしかしたらどこかで説明されていたのかもしれないが、具体的に、どのようなことを言っているのか理解に苦しむようなことが多々あった。もっと丁寧にこの本は読むべきだったのかもしれない。

また原文がどうなっているのかという問題はあるが、正直翻訳がわかりにくかったように思う。単に私の知識不足、読解力の低さに帰せられることなのかもしれないが・・・。

例えば「イギリス」の表記について。この国は色々な表記の仕方があり、場合によってはそれらの使い分けがなされていたり、必要だったりすることは往々にしてあると思われる。しかし、その使い分けについて説明がない状態で使われてしまうと「・・・」となってしまう。

私が気づいたもので、本書で使われていたのはこれらの言葉である。
イギリス、英国、連合王国

用語の統一はしたほうがより読みやすい本になったのではないかと思われる。

学問の専門分化

歴史に限らずよく言われることであるが、筆者もこの点を戒めている。

専門分化が進むと、歴史を専門としない人に本や研究成果を受け取ってもらえなくなってしまう恐れがある。そのため歴史家は、歴史を専門としない人にもわかりやすい説明をすることをしなければならないとしている。

歴史を専門としない人でも置いてかれないような説明をすることは重要であるが、その際、学術的正確性を維持しなければならないのは当然だろう。しかし分かりやすさと正確さを両立させるのは、相当な力量を必要とする。特に文科系の学問は、安易な単純化をすることはできないし、するべきでもないはずだからである。

分かりやすさを徹底的に追求すれば、それはトンデモ本になってしまうだろう。一方で、学術的な正確さを追求すれば、それは非常に難解な本になり研究者や一部のマニアしか手に取らないような本になってしまうだろう。この難しいジレンマとも折り合いをつけていくことが、本を書く者には求められているのかもしれない。

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