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肩関節解剖①-静的安定化機構に着目して-

こんにちは。みるめATです。

前回まで膝関節、腰部と投稿してきましたが今度は肩関節の投稿をしていきたいと思います。AT学生の皆さんも関節上腕靭帯の図と格闘しながらAIGHL?IGHL?MGHL?SGHL?などこの辺の分野で肩関節への拒否反応を示す方も多いのではないかと思います・・・。自分なりに解説を入れながらnoteを書いていければなと思います。肩関節は一つのnoteにまとめると膨大な数になってしまったので何個かに分けて投稿していきたいと思います。

まずは簡単な解剖と静的安定化機構についてまとめていきたいと思います。

◯はじめに

整形外科に勤めていると一般の方だと肩関節周囲炎、腱板断裂、などの患者さんが来院している印象です。また、スポーツだと野球肩、肩関節前方脱臼、鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼など様々な肩関節の疾患があります。野球は現在サッカーに次いで2番目に部活動人口が多い競技になります。野球肩に苦しんでいる学生も多いのが現状です。

平成25年に発表されたアンケート調査によると

今までに肩関節痛の既往がある学生は全体の51.5%であった。
・高校生の全力投球は1日に100球以内と提言されているが、部員数が少数であったり問題があるため、障害予防意識に対して練習時や試合時に制限していない、できない指導者が48%であった。
投球制限をしている学生で肩痛があるのは18%
投球制限をしていない学生で肩痛があるのは24%
・障害予防に効果的とされるストレッチを行っている学生は約80%

以上のことから、部活動で野球をやっている選手の半分以上が肩痛を感じたことがあるということでした。そして、最近話題になっていますが球数問題ですね。それぞれの学校の状況や選手層などもあり、高校生の1日の球数制限である100球を超えてしまう場合もあります。しかし、球数制限をしている選手としていない選手では球数制限をしていない選手の方が肩痛を訴える割合が多いという結果になっています。全体で肩痛に効くと言われているストレッチを行っている割合はとても高いですね。約8割の学生が実施しています。

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なので、肩痛予防のために全員に球数制限をするんだ!と訴えるのも現実的ではないかなと思います。それぞれの高校で環境が全く違うのでそれぞれの環境にあった対応をしていくしかありません。そこで立ち上がるのが我々ではないでしょうか。PT、柔整、鍼灸、ATなどの比較的スポーツの現場に近い専門分野の我々が学生に対してサポートしていくべきかなと思いました。そんなこともあり今回は肩関節についてまとめます。

◯解剖

肩関節には3つの解剖的関節3つの機能的関節があります。書籍や文献によっては機能的関節が2つという表記もあります。各関節とその役割を簡単にまとめました。

解剖的関節
1.肩甲上腕関節
→上腕骨運動の支点
2.胸鎖関節
→鎖骨運動の支点
3.肩鎖関節
→肩甲骨運動の支点
機能的関節
1.肩甲胸郭関節
→胸郭上での肩甲骨運動を許容する役割
2.第2肩関節(肩峰下関節)
→肩関節運動における腱板の滑動性を円滑化する役割
3.烏口鎖骨間関節
→鎖骨と肩甲骨との位置関係を調整する役割

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◯肩関節の安定化機構

肩関節には静的安定化機構動的安定化機構の二つが存在する。

今回の投稿では静的安定化機構についてまとめていきたいと思います。

ー静的安定化機構ー

◯骨形態

・骨の構造に関しては上腕骨頭に比べ肩甲骨関節窩が小さく、上腕骨頭関節面の1/3〜1/4しか関節窩と接触していない

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また、関節窩の深さは長軸で平均5.3mm短軸で平均2.8mmと、短軸方向の方が浅く不安定な形状となっている。

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◯関節唇

この様に肩甲骨関節窩と上腕骨頭の骨性の安定性が乏しい構造となっています。なので関節窩の深さを補い安定性を出しているのが関節唇です。

・関節唇は前述した短軸と長軸の関節窩の深さを長軸方向では60〜80%増加させ、短軸方向では120〜130%増加させることで、上腕骨頭と肩甲骨関節窩の接触距離を40%近く増加させることが明らかになっている。

また、肩関節を脱臼させる際に要する力は60kg〜120kgであった。しかし、関節唇に損傷を加えた肩では8kg〜12kgの力で脱臼したことから脱臼防止には関節唇が重要である。やはり、関節唇などが剥離や損傷している例では、反復性肩関節脱臼や不安定性を生じやすいことがわかります。反復性肩関節脱臼の方が寝返りしただけで脱臼したなどというのも関節唇が損傷し小さい力でも支えられなくなっていることなどが原因ですね。

◯関節上腕靭帯(関節包)

肩関節の関節包に関しては関節包靭帯とともに安定性に寄与する。関節包の一部が索状に肥厚した部分を関節上腕靭帯という。上・中・下に分けられる。(下記図参照)

赤→上関節上腕靭帯(SGHL)

青→中関節上腕靭帯(MGHL)

緑→下関節上腕靭帯複合体(IGHLC)

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下関節上腕靭帯複合体(IGHLC)の前方が前下関節上腕靭帯(AIGHL)、下部が下関節上腕靭帯(MGHL)後方が後下関節上腕靭帯(PIGHL)で構成されている。(下記図参照)

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上記の図にある赤い丸は回旋筋腱板に覆われていない部分になります。次回のnoteでも触れますがこの部分を腋窩嚢といいます。AIGHL、PIGHL、腋窩嚢を合わせて腋窩陥凹と言いますこの腋窩陥凹は筋肉で覆われていない代わりに関節包が肥厚しているという特徴があります。そして腋窩陥凹は上腕骨頭をハンモックのように支えています

下の図をご覧ください。

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肩関節下垂位では腋窩陥凹は弛緩しています。肩関節外転位で緊張します。肩関節約45°で情報の関節包と同じ緊張度が一定になります。外転角度が45°以上になれば上方の関節包は弛緩し、下方の腋窩陥凹の緊張が高まります

◯関節上腕靭帯の役割

関節上腕靭帯は肩関節の肢位により、緊張を変化させる事で安定性に寄与する。

●肩関節外転運動での関節上腕靭帯

・肩関節下垂位→烏口上腕靭帯(CHL)と上関節上腕靭帯(SGHL)が骨頭の下方偏位を制動する
・肩関節外転45°→中関節上腕靭帯(MGHL)と前下関節上腕靭帯(AIGHL)が骨頭の前方偏位を制動する
・肩関節外転90°→下関節上腕靭帯複合体(IGHLC)全体が前方変位を制動し、下方負荷に対しても下関節上腕靭帯(IGHL)が安定性に寄与
・肩関節水平屈曲→後下関節上腕靭帯(PIGHL)が緊張する
・肩関節水平伸展→前下関節上腕靭帯(AIGHL)が緊張する

◯その他肢位での肩関節安定性

肩関節には1st.2nd.3rdポジションがあるのはご存知だと思います。ここからはこの肢位も交えてお話しするので少しおさらいです。

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・1stポジション
肩関節下垂位での外旋/内旋。水平面状での運動。
・2ndポジション
肩関節90°外転位での外旋/内旋。矢状面状での運動。
・3rdポジション
肩関節90°屈曲位での運動。前額面状での運動

●2ndポジションでの肩関節外旋運動での関節上腕靭帯

前述したように肩関節外転位ではSGHL(上関節上腕靭帯)は弛緩し、下方の腋窩陥凹を含めた下関節上腕靭帯複合体(IGHLC)が緊張します。

・主に緊張する組織
2ndポジションでの肩関節外旋
AIGHL(前下関節上腕靭帯)が緊張する
2ndポジションでの肩関節内旋
PIGHL(後下関節上腕靭帯)が緊張する

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関節上腕靭帯の弛緩は今後紹介する肩関節の病態でも大切な部分になります。肩関節の肢位によって緊張する靭帯や組織が違うという認識を頭に入れておくことも大切です。

今回は静的安定化機構について投稿しましたが、まだまだこれだけでは肩関節の安定性を補うことはできません。ここから動的安定化機構も含めて肩関節の安定化や可動性、運動にも影響を与えます。肩関節脱臼、ヒルサック病変、バンカート病変、腱板断裂、野球肩など様々な症状につながります。そのためには肩関節の安定化機構を把握し、病態理解しリスク管理し運動指導を行う必要があります。

今回は静的安定化機構について投稿しました。

次回は動的安定化機構についてまとめていきたいと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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