見出し画像

肩関節周囲炎に対して

こんにちは。みるめです。

前回は肩関節の安定化機構について投稿したので、今回は「肩関節周囲炎」についてまとめていきたいと思います。中高年の方や高齢者の方のリハビリや運動を担当している方はとても多く目にする疾患だと思います。私もクリニックに多くの肩関節周囲炎の患者さんがいらっしゃるので改めてまとめてみました。

◯肩関節周囲炎とは

五十肩前後に起こる原因がわからない肩周辺の痛みと可動域制限を主症状とする状態。いわゆる「五十肩」などど言われることが多いですね。

画像2

・好発年齢
40〜70代に発症する症例が8割以上。初期は疼痛が強く、徐々に関節可動域制限が主症状である。1)
・リスクファクター
糖尿病や甲状腺疾患を罹患している患者さんで肩関節周囲炎のリスクが向上。2)肩関節周囲炎に罹患した症例では糖尿病の有病率は29%で、特にインスリン型糖尿病患者において有病率は高くなる。甲状腺疾患の方の有病率も10%。1)
・疼痛部位
どこかに限局するというよりかは肩関節全体に痛みを訴えることが多く、最終可動域で肩全体の痛みとして感じる。3)

画像所見でもこれがあればと診断できるものはなく、比較的多いものとしては

・肩甲上腕関節内や上腕二頭筋腱鞘内の水腫
・関節包下方の肥厚
・腋窩嚢の狭小化
・腱板疎部の滑膜炎や肥厚

以上のものが多いが、これも確定診断というわけではありません。3)しかし、炎症部位によってこれは変わってきそうですね。

また、肩関節周囲炎は周期に合わせて症状や対応が変わってきます。4)

スクリーンショット 2022-01-11 9.43.47

周期の期間はFrozen shoulderの国際基準では疼痛痙縮期(急性期)が2ヶ月から9ヶ月あると言われているので期間に関してはこの通りではないと自分の中では解釈しています。

◯肩関節周囲炎に対しての物理療法

画像3

・急性期

肩関節周囲炎の急性期では安静が大切となり、医師による薬物療法や注射療法がメインとなります。

肩関節周囲炎の急性期には、パルス超音波療法の非温熱効果が効果的と言われています。肩関節周囲炎と診断された急性期患者に棘上筋、SAB(肩峰下滑液包)、上腕二頭筋長頭腱、肩甲下筋部位に対してパルス超音波を実施しています。5)結果は以下の通りです。

・夜間痛の軽減
・肩関節の屈曲、外旋可動域の改善
・棘上筋腱、上腕二頭筋腱長頭の肥厚の減少(腫脹の軽減)

パルス超音波を照射することで炎症過程の治癒促進と主張軽減、除痛効果によりこのような結果が得られたと考えられています。

このような結果が得られたことから急性期の肩関節周囲炎の患者さんに対してのパルス超音波療法は効果的と言われています。

・慢性期

画像4

肩関節周囲炎の慢性期には可動域制限が残存するケースも多いですが、運動療法と物理療法を組み合わせることで、様々な結果が出ています。外来通院中の方肩関節周囲炎患者に対してリハビリテーション(物理療法と運動療法)を実施。物理療法は棘上筋・棘下筋に対して電気刺激療法(EMS)を実施。6)結果は以下の通りです。

・肩関節屈曲、水平屈曲、水平伸展可動域の改善
・運動時痛の改善(肩関節自動屈曲、水平内転、水平外転)
・洗体動作、結帯動作、着衣動作、運転時のハンドル操作の改善

肩関節周囲炎により回旋筋腱板の機能が相対的に低下し求心力の低下、剪断力の増加により肩関節の支点が定まらず肩関節複合体としてのパフォーマンス低下や肩関節周囲組織への機械的損傷を起こすことが原因と言われています。

このことからEMSにより回旋筋腱板へのEMS刺激が肩関節の求心力が高まったことがこのような結果に繋がっていると考えられています。

◯まとめ

肩関節周囲炎には周期があり、その周期に合わせた処置やリハビリが大切になってきます。この内容はエビデンスベースなので一人一人の患者さんに合わせた内容の提供が大切です。

しかし、病態を理解して適切な物理療法や運動を実施していくことが大切です。運動についてはマガジンの方で改めて投稿していきたいと思います。

ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。


◯参考文献

1)理学療法診療ガイドライン 公益社団法人 日本理学療法士協会

2)Kelly MJ, Shaffler MA, et al:  Shoulder pain and mobility deficits: adhesive capsulitis. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43:A1-A31.

3)肩関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く 監修 村木孝行 編集 甲斐義浩 メジカルビュー社

4)五十肩の評価と運動療法 あなたも必ず治せるようになる! 執筆 赤羽根良和 運動と医学の出版社

5)急性期肩関節周囲炎患者に対するパルス超音波療法の非温熱効果の検討 大矢暢久 富田知也 太田裕敏 川村博文  

6)肩関節周囲炎患者に対する運動療法を併用した電気刺激療法の効果 松崎厚樹 明崎禎輝 横井賀津志

エビデンスに基づく理学療法ー理学療法診療ガイドラインを読み解くー 連載第13回肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン 村木孝行

理学療法の臨床と研究 第25号 2016年 肩関節の理学療法〜肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の理学療法において必要な知識〜 山崎重人


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?