銘柄研究NO1インプレスホールディングス④~出版社の動向~

前回までで、出版業界は人口減少によるパイの減少(趣味や嗜好の変化)、Amazonの参入、電子書籍の拡大という大きな変化が起こっていることを見てきました。

その中で①出版社、②取次、③書店、④Amazon、⑤電子書籍関連業者はどのような動きをとっているのか、また将来どんな状況になりそうなのかそれぞれ仮説を上げて見ていきたいと思います。

上位、下位の会社の動向にフォーカスしてみていきます。

①出版社の今後の動向

1)全体の動向

まずはこちらの記事から

出版社売上高ランキング
1位 講談社(総合出版): 1204億円↑
2位 集英社(総合出版):1164億円↓
3位 KADOKAWA(総合出版):1139億円→
4位 小学館(総合出版):970億円↑
5位 ゼンリン(地図帳):527億円↑
6位 日経BP(経済書):368億円↓
7位 学研HD(学習参考書):300億円↑
8位 文藝春秋(文芸書):219億円↑
9位 マガジンハウス(文芸書):143億円↑
10位 ダイヤモンド社(経済書):134億円↑
11位 インプレス(理工書):128億円↑
12位 東洋経済新報社(経済書):122億円↑
13位 文溪堂(学習参考書):119億円↑
14位 朝日新聞出版(文芸書):118億円→
15位 昭文社(地図帳):87億円↓
※2019年9月時点での売上高ランキングとなっています。
※「↑→↓」は売上高の前年比を表しています。
※有名出版社である岩波書店(総合出版)、新潮社(文芸書など)、宝島社(文芸書など)は売上高不明のため記載していません。
※KADOKAWAと学研ホールディングスは出版事業以外での売り上げが大きいため出版部門のみの売上高でランク付けしています。
【参考】
東洋経済新報社 『業界地図 2020年度版』
日本三大出版社といわれている講談社・集英社・小学館にKADOKAWAが割って入り、4強という陣容になっています。
1位の講談社はライツビジネスと呼ばれる版権事業やB to Bビジネスで大きな利益を得ており、紙媒体の不調をものともせず好調です。
2位以下でもほとんどの出版社が前年よりも高い売上を誇っており、斜陽業界というイメージに反して上位の出版社は全体的に好調といえます。
しかし業界全体の売上が減少していることを考えると、上位出版社と下位出版社との格差が大きくなっていると見ることもできます。

引用:unistyle

https://unistyleinc.com/techniques/1394

さらにこの記事では

出版社の多くは中小企業で、4分の3が東京に集中している。3182社のうち、260社で業界売上全体の8割を占有している。

引用:山田コンサルティンググループ


今後は前述の環境変化の影響を受けて、売上上位の会社と下位の会社の格差が広がることが予想されます。

このような環境下では出版社の役割として良質なコンテンツの創出というのがこれまで以上に大切になってくると思います。

一つの方向性として上位の会社が下位の会社を買収する方向に進むことが予想されます。

良質なコンテンツを独占することで、出版社間での競争相手を減らし、経営資源の余裕をよりチャレンジングなコンテンツの創出、企画に振り分けることができます。

他にも

①流通ルートの確保(これまでの取次との取引を継続するか、Amazon等の買い切りを利用するか。)

②著作権者との関係(これまでは出版するには出版社を頼るしかなかった。電子書籍の拡大で自主的な作品の発表の場が飛躍的に拡大した。)

という他の利害関係者との交渉力の強化という点でも規模の利益の追求は大手出版社の目指す一つの方向性ではないでしょうか。

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