忘れられないカビの味
君はカビの味を知っているか?
私は知っているぞ
(突然の謎マウンティング)
カビ。漢字で書くと黴。
菌類の一部の姿を指す言葉である。あるいはそれに似た様子に見える、肉眼的に観察される微生物の集落(コロニー)の俗称でもある。-Wikipedia
いわゆる、小さな生き物たちがワッショイするカーニバル会場のことをカビと呼ぶらしい。
そんなカビたちの匂いはしばしば”カビ臭い” と呼ばれたりする。
そもそも”カビ臭い”という匂いは何なのだろうか。
具体的に例えるなら
湿っぽい?
雑巾の匂い?
梅雨時の古い小屋の匂い?
ホコリっぽさと木の匂いが混じった匂い…?
なんとなく古っぽい匂いらしい、ということだけは分かる。
このように“カビの匂い”は多様な言葉で表すことができるのに、
逆に“カビの味”の表現はないのだ。
そりゃあ、世間一般的にカビが生えた食べ物はそもそも食べないし、
食べちゃダメ、っていう認識が当たり前になっているからね
(※ブルーチーズなどのカビありきな一部の食べ物は除く)
食べ物に現れる「カビ」の視覚的な特徴としては、なんかボツボツしていて、それが黒かったり、青かったり、白かったりするもので。
そんなボツボツが付いた食べ物はいわゆる「カビが生えた食べ物」と呼ばれ、有無を言わさず即ゴミ箱行きとなる。
そして私は「カビの生えた餅」をうっかり食べたことで
思いがけず“カビの味”を知ってしまったのです。
休日の朝。
「冷蔵庫の中にお餅あるわよ、ちょっと危ないかもだけd」
と手話で話しかけてくる母を横目に、
当時コロナ禍ウェーブが後押ししスローライフ志向のゲームとして爆発的に流行っていた「あつまれどうぶつの森」を片手にやりながら
餅をよく見ずオーブントースターに入れたのが、最大の過ちだった。
この時、餅に黄色いポツポツがあったのは
かろうじて見えていたものの
残念ながら
「…キビかな?」
と視覚的認知バイアスがかかってしまっていた。
私はそのままふっくらと膨らんだ
「カビの生えた餅」を食べてしまった
ファーストキスはレモンの味とかふざけた事言ってんじゃない
カビとのファーストキスは土の味だった
畑にてスコップで軽く土を掘り返した時に、
ムワッと来る野暮ったい土の匂いをラップに包み、
学校のグラウンドの乾いたサラサラな砂を
バケツの中の濁っている水道水と混ぜ合わせて、
コネコネと練った粘土をかじったような、
何とも言えないえぐみのある味だった
「…なんかこのお餅、土の味がする」
この時気づけばよかったのだが
起床したばかりで脳が鈍っていた私は
「まあ、お餅はもち米からできているし、稲穂か何か根っこか何かの味が混ざっているんだろう」
人間、どこか遠い田舎の、のどかな風景を懐かしく感じるものだしお餅にもきっとそんな時があるのかもしれない。
ノスタルジー志向のオーガニックなお餅なのだろう、きっと。
と天才的お花畑発想が沸き起こり、その土の味を受け入れてしまっていた。
そのまま大しておいしくもない土を1個ペロリと食べて、オーブントースターの中に入れておいたもう一個の餅を取り出した。
「さっきのは変な味がしたけど、こっちはちゃんとした餅の味だろう」
と、もう一個の餅を口に含んだ。
やっぱりセカンドキスも土の味だった。
「…?」
まあせっかく焼いてしまったものでもあるし、
見た目は美味しそうでぷっくりと膨らんでいる餅をすぐゴミ箱にボッシュートして捨てるのもいたたまれないので
私はそのままその土を食べた。
2個目の土を食べ終えたころに、ふと、視野の横で必死に手を振って私を呼んでいる母が見える。
青ざめた顔をした母が手話で話しかけてきた。
「あんたこの餅カビ生えてるわよ!?」
「えっ」
その時にやっと寝ぼけていた私の頭は、”餅にカビが生えていた”事を認識した。
「そうか、そうだったのか。あの黄色いプツプツはキビではなくカビだったのか!!」
キビはキビでも「ビ」しか合ってねえ。
と、カビチャーショックを受けつつ
母がゴミ箱に捨てていった餅を取り出しまじまじと見てみる。
確かによく見たらメチャクチャ黄色いボツボツが出来ていた。
どこからどう見ても立派な黄カビ。
こんな黄カビカーニバルが開催されてる餅を
そのまま食べたのがアホみたいに思えてきた
「な…なるほど、カビは土の味がするのか…!」
待てよ、この味は前にも…食べたことが…?
母は賞味期限が切れている食べ物でも「少しぐらいなら大丈夫」とそのままゴーイングマイウェイにボコボコ料理するところがあった
その母の手料理を食べている時に
ごくごく稀にほんのりとした土の匂いが口の中に広がることがあった
あれも、ひょっとするとカビの味だったのではないか。そうか。
…ていうかカビを食べても大丈夫なのか?
…ちょっと不安になってきたのでGoogle先生に聞いてみた。
「黄カビは有毒」
…更に不安になってきたのでTwitter先生に聞いてみた。
すると立派なフォロワーさん(薬剤師)から
「ちょっとだけなら大丈夫。もしひどい腹痛が起こるようなら病院へ」
と、至極まともなアドバイスを頂き、
ますます自分がやらかしたことへのアホさ加減が増してきてきた
それでも今一つ不安が解けなかったので
いつもお世話になっている太〇胃散を飲み、様子を見てみることにした。
すると少しの腹痛を起こしたのち、便が緩くなっただけに留まった。ちょうど便秘ぎみだったので逆に丁度よかった。ありがたい。
棚からぼた餅ならず、棚からカビ餅。
カビ様様であった
Q. “カビの味”はどんな味?
A.土の味。
これから梅雨入りにてカビがワッショイしやすい時期、何かを食べた時に土の味がしたなら”カビかもしれない!”と気をつけてほしい。注意喚起としてここにしたためる。
さよならグッバイフォーエバーカビ…。
君の味は忘れないよ…。
太○胃酸さんいつもありがとう。愛を込めて。
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余談:当時のTwitter
メチャクチャ必死になってたワロ。
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