見出し画像

『きりぎりす なくや霜夜の さむしろに 衣かたしき 独りかも寝む』後京極摂政前太政大臣

《意味》
寒い夜の独り寝。
しんしんと更けゆく夜、人のあたたかさが恋しくなります。


この歌で詠まれている「きりぎりす」、これは今で言うこおろぎのことです。
秋の夜長、虫の声、闇の気配だけが濃く漂う時間。少しずつ近づいてくる冬が感じられる寒さの中、「さむしろ」、幅の狭いむしろの上で自分の衣だけを敷いて眠る淋しさが詠われています。

「さむしろ」は狭いむしろ、ゴザのようなものと、「寒い」という言葉がかかっており、侘しい、淋しい様子が際立って伝わります。
この時代男女が共に眠る際、お互いのきぬ、着物を掛け合って眠ったと言われます。それをまた着て別れる翌朝を「きぬぎぬ」というのはそこから来ていますが、それに対し、一人で眠る淋しさを表したのが「衣かたしき」。敷ける衣は片方、一枚だけ。

ここから先は

717字
毎週水曜日に更新。AuDee「あすなのいろはおと」をより深く楽しんでいただける情報をお届けします。番組に届いたお便りの返信も音声にて配信!ぜひ一緒に楽しんでください。

AuDeeにて放送中の百人一首と音楽を掛け合わせる番組「いろはおと」で取り上げた歌の解説と手書き原稿の公開をしています。 また、番組でいた…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?