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『きりぎりす なくや霜夜の さむしろに 衣かたしき 独りかも寝む』後京極摂政前太政大臣
《意味》
寒い夜の独り寝。
しんしんと更けゆく夜、人のあたたかさが恋しくなります。
この歌で詠まれている「きりぎりす」、これは今で言うこおろぎのことです。
秋の夜長、虫の声、闇の気配だけが濃く漂う時間。少しずつ近づいてくる冬が感じられる寒さの中、「さむしろ」、幅の狭いむしろの上で自分の衣だけを敷いて眠る淋しさが詠われています。
「さむしろ」は狭いむしろ、ゴザのようなものと、「寒い」という言葉がかかっており、侘しい、淋しい様子が際立って伝わります。
この時代男女が共に眠る際、お互いの衣、着物を掛け合って眠ったと言われます。それをまた着て別れる翌朝を「きぬぎぬ」というのはそこから来ていますが、それに対し、一人で眠る淋しさを表したのが「衣かたしき」。敷ける衣は片方、一枚だけ。
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717字
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