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『ながらへば またこのごろや しのばれむ うしと見し世ぞ 今は恋しき』藤原清輔朝臣

《意味》
もしこの先長生きできたなら、つらいと思える今のことも懐かしく思い出されるのだろう。この世をつらいと思った昔が、今は恋しく感じられるのだから。

今はつらくても、きっといつかは笑って話せる日が来る。
悟りの一首です。

この歌の作者・藤原清輔はいわゆる歌道の家である六条家の生まれでした。
祖父、父共に歌の道のエリート。しかしなぜか父・藤原顕輔に嫌われていたらしく、歌の才能をなかなか認めてもらえなかったようです。父・顕輔が編纂した歌集「詞花集」には清輔の歌は一首も選ばれていません。
また、政治の面でも父は息子の出世に非協力的だったので、出世することもかないませんでした。
やがて歌の世界では認められ活躍していきますが、それも父亡き後のこと。藤原俊成・定家親子と歌壇を盛り上げますが、二条院の勅命で「続詞花集」を編纂している途中に院が亡くなってしまい、結局完成させられないままになってしまいました。
なかなかに不遇な人生だったと言えると思います。

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