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『嘆きつつ 独り寝る夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る』右大将道綱母

《意味》
あなたが来ないことを嘆きながら一人で寝る夜が明けるまでの間が、どれほどまでに長いものか、あなたにはとてもお分かりにならないでしょうね。


「今夜もあなたは来ない…」
積もり積もった、女性の深い嫉妬と恨みの一首です。

この歌の作者・右大将道綱母は、かの藤原道長の父である藤原兼家の妻でした。今回の一首のお相手も、この兼家です。
本人の名前は伝わっておらず、陸奥守藤原倫寧むつのかみふじわらのともやすの娘であるという記録だけが残っています。

この歌のエピソードに関して、道綱母は「蜻蛉日記」に詳細を記しています。

道綱母は当時の三大美人に数えられるほどの美人。そして「大鏡」の中で「きはめたる歌の上手」と称されるほど歌の才能はあったものの、そこまで身分は高くありませんでした。しかし夫である藤原兼家はエリート中のエリート、身分の高い大物政治家です。正妻は別におり、道綱母は待つだけの不安な日々を送ります。
そこへ子供が産まれ、ようやく幸せに、と思っていた矢先、なんと兼家の残した荷物の中から別の女性に宛てた手紙を見つけてしまいます。怪しく思った道綱母が兼家の後をつけさせると、やはり他の女性、しかも自分よりも身分の低い女性の元へ通っているのを知ってしまいます。

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