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『高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 たたずもあらなむ』権中納言匡房

《意味》
高い山の峰に桜が咲いたなぁ。人里近い山の霞よ、せっかくの桜が見えなくなってしまうから、どうか立たないでおくれ。


遠くの山と近くの里の対比。歌の中に広がる広大な景色がおおらかな一首です。

この歌の「高砂」。この高砂は地名ではなく、高い山、高い峰という意味で、続く「尾の上」というのは頂上を意味します。
対し、「外山」。これは人里に近い場所を指すとされていて、里山といったニュアンスです。
里の近く、低い山々で咲き始めていた桜が徐々に徐々に高い山へと移っていき、遠くの高い峰の頂上でも咲くようになった。その頃になると里はもう暖かくなっていて、春霞が立つようになってきます。
「さくらさくら 弥生の空は 見渡す限り 霞か雲か 匂いぞいづる」
誰もが知っている文部省唱歌「さくらさくら」、そのままの景色が広がっています。

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