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『あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな』和泉式部

《意味》
私の命はもう長くなく、もうすぐこの世を去ります。あの世へ持っていく最後の思い出として、せめてもう一度あなたにお会いしたいと思っています。

平安王朝きっての恋多き女、魔性の女とも言われる和泉式部の一首です。

和泉式部は父の部下だった橘道貞と結婚し、後の小式部内侍となる娘を産みます。が、当時の第三皇子であった為尊親王と恋に落ちてしまいます。この恋愛は当時としては大スキャンダルだったようで、和泉式部は夫から離縁、父親からも勘当されてしまいました。和泉式部は全てを投げ打って年下の若き貴公子との恋に身を尽くしますが、為尊親王はわずか2年後に亡くなってしまいます。和泉式部は大変気落ちしますが、そんな彼女に次にアプローチしてきたのは為尊親王の弟である敦道親王。この2人の恋は秘密の恋として人目を忍び育んでいきますが、敦道親王は若さゆえ夢中になり、自分のお屋敷に和泉式部の部屋を作ってしまったために正妻が激怒、家を出て行ったことで再び大スキャンダルを巻き起こします。しかしそんな敦道親王も長生きせず、4年後、27歳の若さで亡くなってしまいました。悲しみに暮れた和泉式部がその恋を閉じ込めたのが「和泉式部日記」。その中で式部は親王への悲痛な愛の想いをたくさんの歌に詠んでいます。

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