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『夕されば 門田の稲葉 おとづれて あしのまろやに 秋風ぞ吹く』大納言経信

《意味》
夕方になると、門前に広がる田んぼの稲がそよそよと音をたてて、この葦で屋根を葺いた粗末な家に秋風が吹いてくる。

一面の田んぼの景色が美しい、秋の一首です。

大納言経信こと源経信は、紫式部が亡くなった2年後頃に生まれたと言われており、藤原氏の勢力、貴族権力の終わり頃に活躍した人物と考えられています。もとは宇多天皇を祖先とし、子供が第74番歌の源俊頼、孫が第85番歌の俊恵法師と三代にわたって小倉百人一首に選歌されている唯一の歌人です。
1076年秋に行われた『三舟の御遊』、漢詩・和歌・管弦、それぞれの名手を乗せた舟を川に浮かべて遊ぶ会で経信は遅刻、「どの舟でもいいから乗せてください!」と川岸から叫んだというエピソードが残っています。これのエピソード、経信が漢詩・和歌・管弦どの分野にも自信があり、それをアピールするためにわざと遅刻したのでは?なんてことも言われていますが、三分野どれも優れていたのは確からしく、「滝の音は」の藤原公任と同じく「三舟の才」の持ち主と言われています。

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