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『風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな』源重之

《意味》
風が激しくて岩にぶつかる波が砕けるように、私だけが千々に思い乱れて心も砕け散るほどに思い悩んでいる今日この頃であるよ。

相手に全く振り向いてもらえない。叶うことのない切ない失恋の歌です。

源重之は清和天皇のひ孫。源頼朝の祖先にあたる清和源氏と呼ばれる血筋です。
しかし立場的にあまり恵まれていたとは言えないようで、九州から東北まで各地の国司として地方役人を歴任、都には戻れないまま陸奥で亡くなったと言われています。その赴任先で子どもを亡くしたり、京に残した子どもがいたり。出会いも別れもさまざま、まさに悲喜交々でした。
諸国を旅し、今では想像できないような苦労も多かったであろう人生。今回の歌もそんな重之の絶望や嘆きが強く感じられます。

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