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『侘びぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ』元良親王

《意味》
これほど恋に悩み苦しんでいるので、ことが露呈してしまった今となっては、もうどうなっても同じことです。それならいっそ難波にある「澪標」のように、この身を滅ぼしてでも愛を貫き、恋しいあなたとの逢瀬を果たそうと思います。

禁断の恋、許されぬ想いです。
この歌の作者・元良親王は、暴君と噂された陽成院の第一皇子です。天皇の子供ではありましたが、様々な事情により、自身が即位することはありませんでした。
なかなか政治的恵まれない状況もあったせいか、関心はもっぱら恋愛にあったようで、ついた渾名は「一夜めぐりの君」。夜ごと恋の相手を変えるプレイボーイという意味で、なんと関係した女性は30人以上とも言われています。そのお相手の身分も貴族から遊女、行きずりの女性までと幅広く、世の中の美女と評判のものには実際逢う逢わないを区別なく手紙を書き、歌を詠んでは遣わしていたともいわれております。

元良親王の歌を集めた歌集「元良親王御集」におさめられているのも、女性と交わした贈答歌ばかり。「大和物語」にも恋の逸話がいくつか紹介されており、その恋の多さは源氏物語の主人公、光源氏のモデルになったともいわれています。

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