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『秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ』左京大夫顕輔

《意味》
雲ひとつない空に輝くのではなく、雲の間から射す光を愛でる。平安期らしい美意識、そして今の日本人にも通じる感性の一首です。

左京大夫顕輔こと藤原顕輔は平安時代を代表する歌道の家・六条家の人物で、優れた才能の持ち主でした。六条家は顕輔の父・顕季が興した家で、顕季には2人の兄がいましたが、その兄を差し置いて家を継いだのは末っ子の顕輔。よほどの才能だったのであろうと想像できます。
顕輔が継いでいた六条家に対し、小倉百人一首選者の藤原定家は御子左家という歌道の家を継いでいました。この2つの家はライバル関係にあったのですが、定家の御子左家が芸術至上主義、余韻や幽玄といったものを大切にしたスタイルだったのに対し、六条家はシンプルに淡々と、技巧に走らずストレートに詠むことを良しとしていました。全く異なる歌風だったといえると思います。

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