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『君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ』光孝天皇」

《意味》
あなたに差し上げるために春の野に出て若菜を摘む私の衣の袖に、雪がしきりに降りかかってきます。


雪が降りしく寒さをも厭わず、大切なあなたのために若菜を摘む。
寒いはずなのに、心あたたまる一首です。

この歌の作者・光孝天皇は第58代天皇、平安前期に当たる頃の帝です。親王だった時代が長く、即位されたのは55歳の時。天皇家といえども苦労が多く、質素で不遇な時代が長かったとされています。
その不遇に耐えてきたからなのか、そのお人柄は優れていたと伝わっており、聡明で学芸に優れ、温和で謙虚、その人望の高さが故に皇位継承順位は低かったにも関わらず、人に推されて即位することになったと伝わっています。
そんな苦労人だったことが伺えるエピソードとして、天皇として即位した後も不遇だった時代を忘れないようにと、自炊して黒い煤がこびりついた部屋をそのままに残していたと言われています。驕らず、苦労を忘れず。人望が高かったのも納得だと思います。

今回の一首はそんな光孝天皇のお人柄がとてもよく表れた歌と言えると思います。

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