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『契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪こさじとは』清原元輔

《意味》
二人で固く約束しましたよね、互いに涙で濡れた袖を絞りながら、あの「末の松山」を波が決して越えることがないように、どんなことがあっても二人の愛は変わらないでいましょうと。


「あんなに誓ったはずなのに…」
恋人の心変わりを責めつつ、もう一度やり直したいと願う一首です。

この歌の作者・清原元輔は、先週ご紹介した「夏の夜は」の清原深養父の孫、そして清少納言の父にあたります。祖父と同じく政治的な出世は芳しくなく、しかし歌人としては大変優れていたと伝わっています。
即興で歌を詠む名人だったという話が残っており、第40番歌の作者である平兼盛が歌合のたびにきちんと正装をし、毎度悩みに悩みながら歌を詠むのに対し、「予は口にまかせて之を詠む」、つまり「深刻に悩まないで思ったままに詠めばいいじゃないか」と言ったとか。悩む気持ちがわからない、いわゆる「デキる人」だったのでしょうか。さながらモーツァルトのようだなと想像します。
そんな歌の才のためか、今回の一首は前書きに「心かはりて侍りける女に、人に代はりて」とあり、代作で詠まれたものです。

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