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『見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず』殷富門院大輔

《意味》
私の袖をお見せしたいです。雄島の漁師の袖でさえいくら濡れても色が変わることはないけど、私の袖はそれどころか血の涙に濡れて色が変わってしまっています。


「見ればやな」あなたにお見せしたいわ、という強い言葉で始まるのが実に印象的な一首です。

「私の袖は血の涙で色が変わってしまっている」血の涙とは物騒で不穏ですが、この時代の伝統で、恋や哀しみに胸破られると血の涙が流れるものとされていました。普通の涙は枯れ、それでも哀しみは止まらず、果てに血の涙が流れる。漢詩の中で使われる「血涙」の訓読でもあります。
現代では「涙も枯れた」とは言いますが、なかなか血の涙は出てきません。それほどまでに、昔の人にとっては切実で張り裂けんばかりの想いだったのかと想像できます。

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