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『このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに』菅家
《意味》
この度の旅は急なことだったので、捧げ物の準備ができませんでした。そこでこの手向山で手向ける幣として、この錦の織物のような美しい紅葉を御心のままにお受け取りください。
自然の美しさに心を打たれ、神様に祈りたくなる。神に捧げる一首です。
菅家、聞き馴染みのない名前でぴんと来ないと思いますが、実はこの方は菅原道真です。
菅原道真は平安時代を代表する漢学者です。先祖代々学者である家に生まれ、学者として最高の地位である文章博士になり、祖先からの私塾「菅家廊下」でたくさんの弟子たちを育てたと伝わっています。また、天性の詩人で、「詩だけが友」と言うほどに詩を愛していました。
その人柄や学才を買われ、当時藤原勢力にあった中で、菅原氏でありながら大出世をしていきます。
今回の一首「このたびは」も宇多天皇の御幸にお供して、奈良吉野の宮滝を訪れた際に詠んだ一首です。この時年齢54歳、権大納言で右大将、翌年には右大臣になるという、まさに人生上り調子にあった頃でした。
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1,357字
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