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『風そよぐ 楢の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける』従二位家隆

《意味》
夏の禊。夏の中の涼やかさを感じる爽やかな一首です。

「楢の小川」とは京都上賀茂神社の境内の奥に流れる川のこと。かつて境内に「奈良社」という社があったことや、周囲に楢木が植わっていたことからそう呼ばれるようになったそうです。
「楢の小川」の周囲に植わっている楢の木々の葉を、吹き抜ける風がそよそよと鳴らす。涼やかでまるで秋のような気配を感じるが、行われている行事は夏の禊、夏越の祓え。まだまだ夏なのだなぁ、という歌です。

夏越の祓えとは現在では6月30日に行われている行事。一年の折り返しの6月30日に半年間の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願します。
欠かせないのが「水無月」という和菓子。氷を模した三角形の白い外郎の上に、魔除けの意味が込められた小豆を乗せたもの。今年も食べたよという方もいらっしゃるかもしれません。
かつては冷房も、冷蔵庫や冷凍庫もなく、少しでも涼やかに、少しでも過ごしやすくしようと工夫した昔の人たちの腐心が窺えます。

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