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『筑波嶺の 峯より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる』陽成院

《意味》
筑波山の峰から流れ落ちるみなの川の水が少しずつ溜まって、やがて淵となるように、私の恋心もほのかな想いが積もり積もって、深い深い想いになってしまったよ。


いつも身近にいて何気ない存在だったあの子。いざ離れ離れになるかもしれないとなったら、なんだか気になってしまう…。
いつの間にか抱いていた、恋心の一首です。


この一首の作者・陽成院は変わり者、問題の多いお方だったと伝わっています。動物が好きで馬を30頭も飼ってみたり、かと思えば犬と猿を戦わせて楽しんでみたり、果ては人を殺めてしまった、という話まで残っています。
しかしこの陽成院、同情すべき点は多々あり、その人生を政治に振り回された人物でした。9歳で天皇位に即位、しかし17歳で無理に退位させられ、その後82歳で崩御されるまで65年間も隠居生活を強いられます。
そしてこの数々の陽成院の奇行・悪行も実際に陽成院がなさっていたというより、政治的戦略の中で流された噂、自分達の立場を有利にするための作り話だったのでは、と現在では考えられています。

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