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『嵐ふく 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり』能因法師

《意味》
激しい風が吹き散らす三室山のもみじの葉は、龍田川の川面を覆い尽くし、まるで錦の織物のようだなぁ。

秋の紅葉の美しい景色を詠んだ、そのままストレートに絵が伝わってくる一首です。

しかしこの歌、かなり賛否の分かれる歌となっています。
『描かれる絵は美しいが似たような内容の歌も多い』、『2つ出てくる地名「三室の山」と「龍田の川」の位置関係が合わず、実際には三室の山の紅葉が龍田の川に流れ込むことはない』という意見があるようです。
それもそのはず、この一首は実際の景色を詠んだものではなく、後冷泉天皇の歌合にて「紅葉」のお題で読まれたものでした。その場でパッと心を掴む、パフォーマンス性の高い一首だったと言えるのではないでしょうか。山と川の対比や、風に舞う紅葉から視点を移すと川面と濡れ輝くような艶やかさを得た紅葉が錦のように広がっている、その構成の見事さが評価されています。

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