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『今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな』素性法師

《意味》
あなたが「今すぐ行くよ」というから待っていたのに、あなたが来ないまま秋の夜は更け、もう明け方になってしまいました。

ひとり待つ夜の長さ。恨みと虚しさとさみしさの一首です。

「通い婚」。今では考えられない婚姻制度です。
ラブレターを送り、三夜続けて通う儀式を経て結婚、しかしほとんどの場合同居はせず、妻は夫が通ってきてくれるのを待つばかり。そして一夫多妻。正妻の他にも妻がいるのが当然で、女性は夫が他の妻に夢中になってしまっても容認するしかない。源氏物語の中で光源氏が建てた六条院でも、春夏秋冬それぞれの御殿にそれぞれお気に入りの女性たちを住まわせていました。正妻と同じ敷地内にそれぞれの住まいを持っていたことになります。もちろん互いに交流もあり、平和的な関係ではあったようですが、やはり女性には割り切れないものもあったと思います。
なんとも女性には理不尽としかいえませんが、そんな理不尽のおかげでたくさんの名歌が生まれました。

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