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|dialogue #03-2|NPO法人博多ミツバチプロジェクト(後編)


04 活動を通して感じていること

ミツバチと企業や病院を掛け合わせると、世界って見えてくるものですか!?

それが見えるんですよ(笑)。例えば銀行、ここからは経済が見えてきますね。採れたハチミツをどこでどのような方法で売るのか、その得た利益をどんな活動に繋げていくか。こう考えたらミツバチから経済の話って見えてくるでしょ?これは歴史や環境問題にも同じように繋がっていきます。こんな風に、ミツバチから見えてくる新しい視点を軸に授業をさせていただきました。他にも、ハチミツって体に良いと言われていますよね。それってきっとインターネットなどで情報を得ていると思うのですが、医師の目線だったり、例えば今回協力してもらったヤクルトなど企業からの目線で捉えると、「ハチミツは体に良い」というゴールは一緒なんですが、考え方やプロセスって大きく変わってきたりします。視点を変えることで見えるものが変わるって面白いねっていうことを生徒たちには伝えました。
今回声を掛けさせてもらった企業の方達は、初めてのところばかりだったんですが、どこもとても協力的でした。きっと、子ども達と話す機会を求めてるんだけど、きっかけが中々見つからない。そんな時に、ミツバチを入り口に話すと、それが経済の話であっても頭に入ってきやすくなる。本当にミツバチってすごいですよね(笑)
「みんなが一緒に活動すればもっと良くなる」という話にも繋がりますが、学校も企業もやりたいことはあっても進め方がわからないと言う状況の中、その両者の間に私たちが入って、一緒に手を組めるようにお互いのリソースを合わせることで、社会に与えるインパクトも2倍、3倍にできると考えています。生徒たちにとっても、なかなか企業のお話を聞ける機会なんてないから、良い経験になったんじゃないでしょうか?


学校での授業の様子。ミツバチを通して様々な社会の仕組みを学びます。

他にはどんな活動をしていますか?

太宰府市と協定を結んで太宰府の史跡地でミツバチを育てています。史跡地って、本来は簡単に使用することができないのですが、ミツバチは巣箱を置くだけでいいので、環境活動ということで実証実験的に活動をしています。近隣の皆様からの評判もいいようで、市役所にも好意的な声が届いているようです。ただ、やはりどうしてもハチには「刺す」というイメージがあるので、病院にもメディカルパートナーになってもらっています。
ほかには、ゴルフ場でもミツバチを育てています。ゴルフ場と聞くと農薬をたくさん使っているというネガティブなイメージがありませんか?でも実は、現在のゴルフ場って、そのイメージを払拭できるようにと、ものすごく気をつけていて、農薬にはとても気を使っています。ミツバチは強い農薬があると死んでしまうので、巣箱があるということは、環境にやさしい場だというアピールになります。ゴルフ場って、静かで広いですし、人間もほとんどコースしか歩かないので、実は野生の動物の宝庫です。そして、ゴルフ場で育てたミツバチからハチミツを採って、クラブハウスで提供したり、お土産にしたりしたら、ゴルフ場に新しい価値が生まれるかもしれない。ミツバチはたくさんの可能性を秘めています。

ミツバチの保護活動もされているんですよね?

はい。昨年あたりから福岡市の区役所と連携してミツバチの保護活動を行っています。市内全域に出動しますが、城南区役所で情報を集約し、そこの担当者から連絡を入れていただく形にしています。
ミツバチは、4月から5月の間に自分たちの巣を引っ越す「分蜂(ぶんぽう)」を行います。民家の庭木や軒先などに巣を作っていて、普段はなかなか気づかないのですが、分蜂のときには、何千匹ものミツバチが集っています。実はこれは、引越しの最中に一時的に留まっているだけで、しばらくすると巣を作るのに適した場所へ移動し、きれいさっぱり居なくなってしまうのですが、「巨大な巣ができてしまった!」とあわてて、駆除しようと通報されたりすることがあります。この時のミツバチって、お腹いっぱいでふわふわ飛んでいる状態なので、刺されたりはしないのですが、やっぱり住民の方は不安ですよね。なので、巣の撤去を行って、巣からハチミツが採れたら、住人の方にそのハチミツをお渡ししたりしています。捕まえたミツバチは、私たちが育てたり、福岡市植物園などで一緒に育てたりしています。中にはセイヨウミツバチも含まれますが、そこは専門外なので、セイヨウミツバチを育てている方へお渡ししています。巣を移動することでミツバチたちに不安を与えるかもしれませんが、そのままにしておくと殺虫剤を撒かれる恐れもあり、リスクが高いので、保護する方が良いと考えています。
昨年は、23件ミツバチに関するお問合せがあり11群を捕獲しました。これまでは駆除されていたそうですが、ミツバチって、人間が食べられるものを作り出せる唯一の昆虫です。だから、なんとか保護していきたいと思って、保護活動は無償で行っています。


巣箱はこまめに掃除してあげます。

05 これからの展望

ミツバチの保護をメインとしたユニークな取り組みに、どんな反響がありましたか?

行政からの視察や企業からの問い合わせも増えてきています。反響が広がって授業の依頼が増えて私自身、驚いております。一つ考えているのは、ありがたいことに大学生からの協力も増えてきたので、彼らを先生にしても面白いのかなとか、企業と大学生が手を組んで授業をしたら面白いかなというアイデアは頭の片隅にあります。大学生にとっては企業との接点も作れて、高校生に教えるという経験も得られるし、高校生にとっても、身近な大学生とのセグメントが取れるので、お互いに良い効果があるんじゃないかと思っています。
今の大学生はボランティア精神が高く、社会の役に立ちたいという志も高いと思います。東明館高校の生徒さんにミツバチの授業をすることがありましたが、学生たちは「将来の子どもたちに何かを残したい」って言うんです。子どもが将来の子たちのためにですよ。すごいですよね!ボランティア精神に溢れ、パフォーマンス的なところが一切なくて、本当に純粋で素晴らしいなって、若い世代と直接触れ合う機会が少ないので、とても刺激的な経験でした。
もう一つ感じているのは、みんな何かを始めるための理由や動機を探している中で、私たちの活動って、もしかしたら「ミツバチ」というピンポイントな表現だからわかりやすいのかもしれませんね。環境のために森をきれいにしようとぼんやりした表現より、「ミツバチが生きられる環境を作ろう」の方が活動の中身が分かりやすい。川での活動だったら、川をきれいにしようじゃなくて、「アユが戻って来れる川にしよう」の方がやっぱり分かりやすいし、何かを始める動機にもなりやすいのではないでしょうか。

10年後どんな団体になっていると思いますか?

できれば次の世代に引き継ぎたいですね。若い理事長に代わって、若い世代の感覚でどんどん動いて欲しいです。若い力がどんどん加わって活動を広げていって欲しいです。そう考えるようになったのはやっぱり教育に関わったことが大きいですね。今の若い子は・・・という言い方をする方もいらっしゃるけど、そうじゃない。私たちにないものをたくさん持っているので、そこを引き出していかないといけないと思います。


春と秋のタイミングで採蜜を行います。