新型コロナウイルス感染症に関連する四半期決算・レビューのポイント

新型コロナウイルス感染症の拡大がまた懸念されるところであり、これが企業の決算・監査(レビュー)に重大な影響を与えると考えられることから、日本公認会計士協会では監査上の留意事項を公表しています。

今月は、四半期決算・レビューが行われる会社が多いと思われますが、その中で特にポイントとなりそうな点をまとめてみました。

1.固定資産の減損の兆候の識別
既に、減損の兆候が把握されている固定資産(グループ)については、四半期決算においては、必ずしも損益やキャッシュ・フローあるいは市場価格(時価)を入手する必要はなく、その回収可能価額を著しく低下させるような経営判断や経営環境の変化がなかったどうかに留意することとされています。

四半期レビューにおいて、監査人は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、回収可能価額を著しく低下させるような上記に当てはまるような経営判断や経営環境の変化が生じている可能性がある(高くなっている)ことに留意して、経営者等への質問を実施し、その回答を評価しなければならないとされています。

2.繰延税金資産の回収可能性の判断
四半期決算における繰延税金資産の回収可能性の判断は、原則として、年度決算と同様の方法により回収可能性の判断を行うこととされていますが、前期末に比べて経営環境や一時差異の発生状況に著しい変化がなければ、前期末に使用された将来の業績予測等を利用できるとされています。

四半期レビューにおいて、監査人は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、経営環境や一時差異の発生状況に著しい変化が生じている可能性がある(高くなっている)ことに留意して、経営者等への質問や分析的手続を実施しなければならないとされています。

四半期特有の会計処理及び簡便的な取扱いは、経営環境や一時差異の発生状況に著しい変化が生じていないことを前提として認められれている点に十分留意する必要があります。

3.会計上の見積りに関する追加的な開示
会計上の見積りを行う場合に、新型コロナウイルス感染症の影響(今後の拡大の可能性や収束時期等)についてどのような仮定を置いたかを追加情報として記載することが求められています。

3月決算会社では、前期末の決算において既に追加情報を記載されている会社が多いと思われますが、この四半期決算において、その仮定に重要な変更があった場合は、追加情報としてその変更の内容を記載する必要があるとされています。

また、重要な変更がなかった場合でも、それが財務諸表の利用者にとって有用な情報であると判断される場合は、重要な変更を行っていない旨の追加情報を記載することが望ましいとされています。

また、前期末の決算において追加情報を記載していない場合でも、この四半期決算において、重要性が増したと判断される場合は、新たに追加情報を記載する必要があるとされています

4.継続企業の前提
四半期レビューにおいて、監査人は、積極的に継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるかどうかを確かめることは求められていないとされています。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められると判断した場合には、質問や関係書類の閲覧等の追加的な手続を実施し、継続企業の前提に関する開示の要否等を検討する必要があるとされています。

状況に応じての具体的な対応は、下記の参考資料に記載されていますので、ご確認ください。

【参考資料】
新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その6)

2020年6月30日 日本公認会計士協会
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200630fch.html

関西出身の会計事務所ベテランスタッフ「とり君」が教える、税務のハナシ。 国際税務から海外進出・連結納税・連結決算・IFRS 対応・公益法人支援まで幅広くわかりやすく解説します。