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AIの出現で占い師は不要になる?

2023年2月20日配信「無料メルマガ」に掲載した内容と3か月経った現在の考え、AIとこれからを学べるかも知れない本、AIで合成したカバーアート、Tシャツ姿のウイリアム・リリー(17世紀の英国占星術師)について。

Q: 最近のAIのニュースや話題を見ていると、将来は悩み相談にもAIが活用されていく様に思いました。
もっと言うと、占いに聞くよりAIに聞いた方が具体的なアドバイスが聞けそうです。そこでお聞きしたいのですが、相談できるAIが現れると占いや占い師は必要なくなると思いますか?

A: 占いの様に曖昧とした分野への要求度は、さらに高まると考えています。
少し背景を交えてその理由について述べてみます。
計算機の進化速度はカーツワイル博士という人が予測したよりも速く進んでいて、
一台のパソコンが人間の脳を越えるのが2025年頃とする専門家(筑波大学助教授 落合陽一)も現れました。[1]
AIが人類を越えるシンギュラリティ(技術的特異点)は、カーツワイル博士が預言した2045年よりも前倒しになるのかも知れません。
いずれにせよ、今後はデジタルが電気やガスの様に完全に生活の一部になり(これはすでにスマホの普及という形で半分実現されていますが)そこにAIが加わります。つまり電気・水道・ガス・デジタル(AI,VR含む)です。
昨年発表された画像処理AIやChatGPTの進化速度は、これまでのテクノロジーとはまるで比較が出来ません。大袈裟に言えば、これまで100年で起きた変化が1ヶ月で起きる様な速度です。

今、洋書を翻訳しています。
この流れで感じるのは、間もなく人の手による翻訳は消えるということです。
これからの翻訳家の仕事は監修と校正となり
その少し先ではそれもAIが行う様になるでしょう。[2]
簡単な論説を書く、絵を描くといった仕事は人なら数時間かける作業です。
でも現在のAIは1分前後で完了します。
そしてその精度と完成度は今後も、おそらく指数関数的に上昇します。
人よりも精度が高くなりますから、翻訳やプログラミングなどは最初にAIに任せる様になるでしょう。[3]
少し手直しをして「後はこういう感じで書いて」と命令すれば終わりです。
いずれ、新しい本もネタさえあれば「こうこう、こういう感じで、この本とこの本を参考に、1ページ400文字で200ページ分書いて」と伝えれば、数分で草稿を作ってくれるでしょうし、ロゴデザインや、イラストも同様です。[4]
すでに作曲AIによる音楽が商業利用されています。[5]
ホワイトカラーの仕事の多くをAIが肩代わりする世の中がすぐそこに来ています。
さて、そうした時、わたしたちは何をすれば良いのかを真剣に考える様になると思います。(むしろ考えざるを得ません)
人間ができることをAIがより上手く、数秒で完遂させる世界では、人は自分の存在価値と向き合うことになるからです。
自分は何者なのか」「自分は何をしたいのか
そうした問を持つ人ほど、高いストレスを抱える様になるでしょうし
専門性の高い知的分野にいる人も、その問題に直面すると思います。
「専門性」は知識と分析経験量、情報の評価力に比例するからです。
そして、その分野こそAIが得意とするところです。
AIに創造性はありません。
でも、おそらく高度に洗練されたAIが出力する結果は、
人が作り出すものと見分けることは大変難しい。
現在のAIは生まれたばかりの赤子同然です。
それでもStableDiffusionMidjourney(いずれもAIサービス)が作り出す絵の何割かは、すでに「見分け」がつきません。
近い将来、誰でも本や論文を書くAI、絵や音楽をつくるAIを使う様になりますから
人が消費する以上の量が市場に溢れることなります。
すると別の問いが生まれます。
「そのように作られたものを誰が読んだり触れるのか?」(この問は上述の落合陽一氏が発しています)答えは保留しておきましょう。
さて、こうした近未来では、実存を求める人ほど、
肉体的な充足感、恋愛、健康、汗、人の熱量を求める様になるでしょうし、そうした時は同時に、精神性や神秘性を求めるのは明らかです。
より人間的な熱量と曖昧性を求めるのです。
ですから占いは廃れるどころか、形態はさらに多様化し盛んになると考えています。

ぐらメルマガ Archer 2022-2-20配信

AIが占いするなら占い師は不要?

すでにAI占いを開発している人たちがいます。i-mode時代に占いコンテンツが巨万の富を生み出しましたが、やはりAI占いも、有名占い師を模倣するタイプが流行るのかも知れません。でも、上述の様にAIが当たり前となる時代に求められるのは、人の熱や汗です。それが霊感的なものであろうと、理論化された占術であろうと「人」が介在することに意味があり、それを求めるのだから、やはり占い師が消えることはないと思います。
さて近い将来、物理的なコンタクトが贅沢品となる可能性もあります。熱と汗を含む「リアル」に付加価値が生まれ、一定のコストや所得が要求される世界は富裕層だけのものになるのでしょうか。

なにが変わった?

この2ヶ月、意志と運命について考えることが増えました。ChatGPT4とのやりとりでリアルに「自分の意識や意志と、近未来で高度化するであろうAIのそれとは、どれほどの差があるのか」と考え始めたのがきっかけです。自由意志を幻想とするスピノザ、あるいは前野隆司の受動意識仮説を軽く見ていたのですが(ごめんなさい)、AIを意識モデルとして捉えた時、自分の無知に気づきました。意志と運命については最初からやり直しています。

AIとこの先が少しわかるかも知れない本

AIによって変化する暮らしについては次の四冊を推薦します。それぞれ視点や切り口が異なります。


スピリチュアル・マシーン
レイ・カーツワイル著

人間の知性に匹敵する「スピリチュアル・マシーン」とシンギュラリティ(技術的特異点)の到来を予想し、技術的特異点がもたらす未来、人間と機械の統合が生活や社会に与える影響を論じます。発刊された当時の予想と比べて現実の歩みは遅れていますが、未だに強い影響力のある一冊。技術革命・進化に興味がある人向け。


人類の歴史とAIの未来
バイロン・リース著

博覧強記の著者は、過去の技術革新から学ぶことで、AIの持つ潜在的な力を理解し、未来の展望を描くことができると主張します。技術と歴史好きに読みやすい一冊。そして地に足のついた論旨には説得力があります。著者は技術調査会社ギガオムCEOの創設者。

AI 2041 人工知能が変える20年後の未来
カイフー・リー著

10本の物語を通して、AIが次の20年でどのように進化し、生活や社会にどのような変化をもたらすかを具体的に予測しています。感じるのは著者カイフー・リーの人への愛。物語好きにぴったりの一冊。著者は台湾生まれのアメリカ人計算機科学者。米国ハイテク企業を渡り歩いてきた人。YouTube:人間がChatGPTに負けない3領域


ザ・セカンド・マシン・エイジ
エリック・ブリニョルフソン&アンドリュー・マカフィー著

デジタル技術の急速な発展がもたらす第二次機械化時代に焦点を当てています。AIとの分業をテーマに頭脳労働やコミュニケーションの変革が及ぼす影響と、社会全体の利益について。機械が人と企業の未来をどう変えるかを論ずる、アンドロイドに仕事を奪われるかなどTED講演を日本語字幕で見られます。

最近読んでいる本

温かいテクノロジー
林要著
本書はAIがいかに素晴らしくとも、それは人の幸せに貢献しているのか?テクノロジーで人類は幸せになったのか?といった問から始まります。著者は体温をもったペットロボット「LOVOT(ラボット)」の開発者、GROOVE Xの創業者。自分はテクノロジーの目的が、人間の機能や作業効率を高めるものと考えていますが、著者の視点は少し違います。LOVOTの開発で必要になった「感情とはなにか?」「命とは…」など極めて曖昧なテーマに答えていくのです。
特に効率を高めるわけでもないロボットを無駄と思うか、無駄の背後に包容力や豊かさを感じとるか。自分はどちらだろう。

脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説
前野 隆司著
20年前のベストセラー。工学博士の著者はロボットを作る過程で、人の意識を研究する必要がありました。そこで判明した事実を淡々と明らかにします。その結論は「受動意識仮説」。ここで下手な説明を読むよりも1200万回再生されている有名な動画をご覧下さい。https://youtu.be/Ox8gJEIe5Ac 「意識は幻想か?―「私」の謎を解く受動意識仮説

註釈

  1. 落合陽一のシンギュラリティ論】シンギュラリティは2025年に来る
    https://www.youtube.com/watch?v=j2TbvmXN_Y4

2.「翻訳家の仕事は監修と校正となりその少し先ではそれもAIが行う様になるでしょう。」
この予想について現在は考えを変えました。起きるのは言語間の障壁消失です。ですから、翻訳をする人たちが単に増えるだけかも知れません。80年代、グラフィックデザイナーには、カラス口(からすぐち)やロットリングをはじめとする特定の道具を扱うスキルが求められました。イラストレーターであれば、アクリル絵の具やカラーインクの習得です。ところが90年代後半からMac/PCのソフトウェアが台頭し、アナログ画材のマスターは不要になりました。たとえば、アナログ画材で常に0.1mmの真っ直ぐな線を引くには、少なくとも1〜2年の訓練が必要です。ソフトウェアの登場で、そうした特定作業の訓練期間が不要になったのです。
翻訳業に従事していた人たちはAIをアシスタントとして使い、さらに翻訳とは無縁だった人たちには、その門戸を開くかも知れません。外国語に通じていることよりも、特定分野の専門性や母国語の表現力がより重要になります。一方、国内の書籍販売部数は減り続けています。翻訳で生計をたてるのはさらに難しくなりそうです。
参考情報:https://love-comes-true.jp/ranking/ 【世界読書ランキング!】日本人の読書量が減っているのは本当?

3.「プログラミングなどは最初にAIに任せる様になる」
実際これを体験中です。ITやゲーム業界に籍を置いていた経験から、プログラミングの考え方は学んでいます。でも実際に動作するプログラムは組めません。ところが、ChatGPTの登場で動作するアプリケーションを作れる様になりました。「何をさせたいか」「どんな結果が欲しいのか」を正確に伝えることが出来れば、ChatGPTはコードを書いてくれるし、デバッグもしてくれます。アプリケーションを作りたかった自分には夢の様な出来事でした。

4.「ロゴデザインや、イラストも同様です」
独創や説得力という点で、業務で及第点をとれるレベルではないかも知れません。でも、プロのデザイナーやイラストレーターのアシスタント・レベルに達するには、それほど時間はかからないと思います。現在の問題は、AIのソースとなる作品の著作権問題です。もしAIの学習ソースとなる作品がネットから消えた時、AIはどの様に表現力を向上させるのでしょう。

5.「作曲AIによる音楽が商業利用」
たとえばAIVA(https://creators.aiva.ai/)では、月額たったの49ドルで、生成した楽曲の著作権込みで使用できます。

カバーイラスト「Tシャツのウィリアム・リリー」

つい最近公開されたPhotoshop(β版)搭載のAIジェネレーティブで作りました。こうしたコラージュを作るには従来なら少なくとも2〜3時間かかり、商用であれば1日仕事(あるいはもっと)です。一方、AIは20秒から30秒、画面サイズにもよりますが長くて数分。手で描く快感は皆無。プロンプトを打って出来上がりを待つだけです。

Adobe Photoshop β

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