バロタが何言っているかわからん、という人向けの解説(その4)

2. クランク、ギアとチェーン

2.1 フロントギアを小さくすると軽く感じる理由

バロックギアの話に行く前に、まずは自転車の基本的な仕組みのおさらいです。そんなのわかってる、という人は次回まで待ってください。
とりあえず、真円ギアの話からします。

ギアはただ回っているわけではなく、図2のように、後輪のギアとチェーンでつながっています。クランクは前輪のギア(前ギア)にくっついていますが、その力をいれる点(ペダル)は、前ギアよりも大きい半径を回っている、というのがまずポイントです。

ペダルにかかる力を F_p とします。(noteではどうも下付き・上付きが表現できないので、_ で下付き、^で上付きを表すことにします。見にくいですが)

基本的にペダルからの力は、図2のようにペダルが描く円の接線方向にかかっています(ここで、ペダリングの上手い下手はとりあえずおいておきます。どんな下手くそなペダリングでも多少なりとも円の接線方向に力がかかるようにできています)。次のポイントは、前ギアの「どこに」力がかかっているか、ということです。

話を簡単にするために、後ろのギアの大きさは固定しましょう。後ギアにトルクを発生させているチェーンにかかる力を F_c とします。途中のロスがないとすると、前ギアにもチェーンを通して、F_cの力がかかります(図2)。

図2 ペダルに働く力とチェーンに働く力(クランクC-Bの角度によらず、A点は常にチェーンが接する点)

力がかかるところは、チェーンがギアに接しているところ、図のA点です。チェーンがギアにくっついている部分にも力はかかっていますが、ここは無視してよいです。ようするに、円盤の外縁に糸を結んで引っ張っているのとおなじです。

さて、その状態でクランクを回すと、クランクの先のペダルにかかるF_pは、
F_cよりも小さくなります
。なぜかって? これが「てこの原理」です。この場合の「支点」は、クランク軸の中心、図のB点です。 B-AよりもB-Cの方が長いので、その比の分だけF_pは小さくなります。

注)A点はクランクの位置に関係なく、いつもギアの上付近です(つまり、フロントディレイラ付近)。ペダルを踏んでるとき、上側のチェーンは引っ張られていますが、下側は緩んでいます。なんとなく、ペダルを一番踏んでいる付近(たとえば、3時の位置とか)でチェーンを引っ張っていると思うかもしれませんが、クランクがどこにあろうが、チェーンを引っ張っている位置は常にA点です。

前ギアを大きくする(A点がC点に近づく)と、「てこの原理」が効きにくくなります。極端な話、ギアサイズとおなじクランク長なら、当たり前ですが

F_p = F_c

になります。なので、前ギアが52Tよりも、39Tの方が踏む力は小さくて済むので、ペダルが「軽く」感じるわけです。

2.2 トルクは消えない

2.1 では前ギアの大きさによって、踏む力が変わることを説明しました。ではトルクはどうでしょう?ちょっと計算してみましょう。
ペダルの長さを R_p (図のB-C)とすると、ペダルを回すトルクは、

R_p x F_p 

でしたよね?
一方、前ギアにかかるトルクは、前ギアの半径を  R_g(図のB-A)とすると、

R_g x  F_c

です。しかし、「てこの原理」により、

F_c = R_p/R_g x  F_p

なので、結局、前ギアにかかるトルクは、

R_g x F_c = R_g x  R_p/R_g x  F_p = R_p x F_p

となって、結局、ペダルを回すトルクとおなじ、R_p x F_p になります。

ああ、式を追うのめんどくさいですよね?
要するに、トルクは(同じ回転軸に対して)途中で消えたりしない、と理解していただければよいです(摩擦とかはとりあえず無視します)。

つまり、前ギアにかかるトルク = ペダルを回すトルク

ということです。そして、前ギアが大きくても小さくてもこの式はおなじです。ということは、フロント2枚だとして、

小ギアにかかるトルク = 大ギアにかかるトルク = ペダルを回すトルク

です。とりあえず、これを抑えればOKです。

                          つづく・・・


                    

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