バロタが何言っているかわからん、という人向けの解説(その5)
2.3 エネルギーは?
トルクがわかったので、エネルギーをまた考えてみましょう。
(9)式からちょっと表現を変えて、
自転車の運動エネルギー = トルクを掛け続けて回した角度 x トルク (9’)
でしたよね。 トルクは消えない、のでこの式は、大ギアでも小ギアでも
常になりたちます(しつこいですが、いろいろなロスは全部無視します)。
結局、例えば、ペダルを1周(360° = 2π)回せば、前ギアも1周回るので、
エネルギー = 2π x トルク
もいつもなりたちます。
言い換えると、ペダルを回して得られる運動エネルギーは、フロントが52Tだろうが、36Tだろうが、チェーンにかかる力 F_c(図2)が同じ限り、ペダルをおなじ回数だけ回せば同じ、ということです。
3. 楕円ギアの原理
3.1 楕円ギアとトルクとエネルギー
ようやく、非真円ギアの説明に入れます。バロックギアや楕円ギアなど、真円ではないギアを模式化すると、図3のようになります。ようするに、非真円ギア=角度によって半径が変わるギアということです。
図3: バロックギアとチェーンの位置
バロックギアでは、クランクの位置によって、チェーンと回転軸の長さが変わります(図3)。つまり、クランク中心からギアにかかる力の作用点までの距離がクランク半周の間に変わります。
標準的なセッティングでは、バロックギアの短軸側にクランクがくるようにします。いま、ギアにかかる力(チェーンの張力)F_cが一定だとすると、
クランク軸の角度によるトルクの変化は、おおむね図4のようにかけます。
図4: トルクの変化。チェーンにかかる力F_cが一定で、バロックギアの長軸相当の大ギアと短軸相当の小ギアの場合(クランク軸の角度と書いてますが、クランクの角度ですね)。
比較のために、バロックギアの長軸相当の真円ギア(大ギア)と短軸相当の真円ギア(小ギア)のトルクも書いていますが、F_cが一定なら、そのトルクは変化しないので、図で水平線になります。
さて、このようにトルク変化する場合、エネルギーはどうなるでしょうか?
エネルギーを計算したければ、トルクに角度かければいいのでしたよね?
でも、トルクが一定なら、計算は簡単ですが、図4のような場合はどうすればよいでしょうか。そこで、「積分」の出番です。
あ、ここで読むの止めないでください(笑 以下の話は微積分を忘れていても理解できます。
図4のバロックギアのトルク変化の場合、0度から180度までの
エネルギー = トルクx角度
は、図5の斜線部分 B の面積に相当します(これが積分の概念です)。
真円ギアの場合はトルク一定なので、長方形の面積になるので、まさにトルクx角度になっていますよね。
図5: エネルギーはトルク分布の「下」の面積に相当する。Cの部分は、大ギアの下の長方形部分全体(図が複雑になるので、斜線は引いていない)。
図5をみると、それぞれのギアで出せる(もしくは消費される)エネルギーの
大小関係がひと目でわかります。
Aの部分の面積(小ギア) < Bの部分の面積(バロックギア) < Cの部分の面積(大ギア)
バロタの漫画(第3話)で、面積がどうの、、、と唐突に出てきたのは、エネルギーの計算だったわけです。
(つづく ...)
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