バロタが何言っているかわからん、という人向けの解説(その3)

1.4 速度と加速度

「えー、そう言ったって、1500Wとか出せる人はスプリントとか速いじゃん。」と思ったあなた、よいところに気づきましたね(池上さん風)。
速度と加速度は違います。式で書くと、

速度 = 加速度 × 継続時間  (3)

という関係にあります。加速度が大きくても継続時間が短ければ、速度は大きくならない、ってことです。


俗に言う「黄金のタレ」を思い出すとわかりやすいかもしれません。アタックの「瞬間の」スピード(これがほぼ加速度)が速くても、すぐ脚にきて踏むのをやめると結局速度が上がらないので、逃げられないですよね。逃げたければ、ずっと踏み続けなけばならない(加速度を継続させる)わけです。

1.5 エネルギーと力の関係

自転車のスピードを速くしようと思ったら、まずはペダルを踏む力を大きくしますよね。強く踏むわけです。スピードが速くなると運動エネルギーが大きくなるんでしたよね? 

力とエネルギーは関係している

のです。例えば、重いものをある高さまで持ち上げるとエネルギーを消費します(つまり、疲れる)。あるいは、重たいものをある距離引っ張るのにもエネルギーが必要です。

このように、エネルギーと力には、ある「距離」の間、力を掛け続けるとエネルギーを消費する、という関係があります。式で書くと、

エネルギー = 力 × 力を掛け続ける距離  (4)

つまり、エネルギー と力が直接変換できるのではなくて、力に距離をかけたもの(物理っぽく言うと、距離で積分する)とエネルギーが同じ、というのがポイントです。これはあとでまた出てくるので覚えておいてください。

1.6  力とトルク

さて、バロックギアのマンガではトルクというのがキーワードになっています。「トルク」ってなんでしょうか。今回の話では、ギアをいかに回転させるか、というのがポイントなのですが、トルクは何かを回転させる能力のことです。力そのものとは違います。別の言い方をすると、トルク=ひねる力、です。式で書くと、

トルク = 回転方向の力 × 回転の中心から力をかける点までの距離  (5)

真円のギアを回している状況を単純化して書いたのが図1です。

図1 トルクと力の関係

具体的には、この場合、半径はrで、力はFなので、トルクはr x F

そう、トルクというのは力×距離、なのです。
あれ、それじゃあ、前にでてきたエネルギーとおなじじゃない?」って思ったあなた、いーいところに気づきましたね(池上さん風)。

トルクと回転させるのに必要なエネルギーは本質的に同じ(物理っぽくいうと、「次元が同じ」)なのです。

1.7 トルクとエネルギーの関係

具体的に、図1の場合で考えてみます。力 F は常に回転方向(円の接線方向)にかかっています。
力Fでギアを1周させた場合、1周の距離(円周)は2 π r なので、

回転のエネルギー = 1周の距離x接線方向の力 = 2 π r x F  (6)

です。 トルクは r x F でしたよね。なので、あるトルクでギアを1周回したときに得られる「回転のエネルギー」は、

回転のエネルギー = 2 π xトルク  (7)

と表すことができます。これで、トルクと回転エネルギーの関係がわかりました。 ちなみに、この 2πというのは「ギアを1周させた場合」だから出てきた数です。ギアをまわすのが1/2周なら、2π /2 = πだし、1/4周なら π/2 です(
数学を覚えている人なら、これが「ラジアン」という単位で測った角度だと
いうのがわかると思います。180度= πラジアン)。つまり、

回転のエネルギー = トルクを掛け続けた角度xトルク  (8)

ということです。あれ、前節の(4)式の関係となにか似ていますね!
(4)式は物体が直線的にふつうに移動する場合で、(8)式は物体が回転する場合、の関係式で本質的におなじことです。


「距離」に対応するのが「角度」、「力」に対応するのが「トルク」です。
以下の話では、回転している場合だけを考えるので、(4)は忘れても大丈夫です。(8)を使います。

ここで、ギアの回転のエネルギーが100%、自転車を進めるエネルギー=運動エネルギーに変換されるとすると(実際には、チェーンやタイヤ、空気抵抗などでロスをしますが、後の説明には関係ないので無視します)、(6)から

自転車の運動エネルギー = トルクを掛け続けて回したギアの角度xギアを回すトルク  (9)

という関係があることがわかります。ですから、自転車のスピードを大きくしたければ(つまり、運動エネルギーを大きくしたければ)、トルクを大きくして、かつぐるぐると何回も回せばよい、わけです。自転車乗りにわかりやすい表現で言えば「重いギアを、速く回せ」ということです。重いギア=回すのに必要なトルクが大きいギア、だからです。

ここまでの説明がわかれば、次からの話が少し理解しやすくなるでしょう(たぶん・・・)。 

                          つづく・・・

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ロードレース初心者の方に

ロードバイクを乗り始めたばかりの方に


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