言葉に囲まれて

日没がせまる。

私はマンションの広大な敷地の中を

自宅を目指して歩いている。

18時43分、

ふいに、私の頭は照らされる。

灯りがついたのだ、と脳が遅れて認識したとき、

私を取り囲む全ての光が、

いっせいに、ではなく

まばらに灯っていった。

光は何よりも速い。しかし、

広大な敷地の全てに光が行き届くのには、

光速ではならないらしい。

光に取り囲まれて、

ふと、私は言葉にも取り囲まれていると思った。

気がつけば言葉を仕事にし、

暮らしの中で言葉の仕事が舞い込み、

私はもう、

言葉の森に囚われてしまって引き返せない、

そんな気がした。

瞬間的な波のような点灯はもう終わり、

いまはただの夜の街となった光の中を、

私はずんずん、歩いていった。

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