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天文俳句 (17)正岡子規に学ぶ天文俳句

俳句といえば子規

正岡子規(1867-1902)はわずか34歳で命を閉じたが、現代の俳句と短歌を生み出した偉大な俳人・歌人である。

「子規は天文俳句をどの程度詠んだのだろうか?」

そんな疑問を持ったとき、一冊の本に出会った。俳人、夏井いつきによる『子規365日』(朝日文庫、2019年)という本だ(図1)。よい機会なので、子規の俳句を調べてみることにした。

図1 夏井いつきによる『子規365日』(朝日文庫、2019年)の表紙。

子規の天文俳句

子規の天文俳句を表1にまとめた。ここで天文俳句とは天文関係の用語(実際には月と星)が含まれている俳句のことである。天文用語が季語になっていない俳句も含まれていることに注意されたい。

 

天文俳句率

『子規365日』掲載されている365句のうち、月や星が読まれている俳句は16句ある(表1)。単純に天文俳句率を計算すると、16/365 = 4.4%になる。そのうち、きちんと季語になっているものは10句(表1では赤い字で示した)。したがって、真の天文俳句率は10/365 = 2.7%になる。

以前のnote「天文俳句」の(11)から(13)で次の本を用いて真の天文俳句率を調べたことがあった。

[1] 金子兜太監修による『365日で味わう美しい日本の季語』(誠文堂新光社、2010年)
note「天文俳句(11)」天文俳句って、どのぐらいあるの?https://note.com/astro_dialog/n/n7a8c78fcf7e9

[2] 『別冊 NHK 俳句 保存版』片山由美子、NHK出版、2020年
note「天文俳句(12)」天文俳句って、どのぐらいあるの?、再び
https://note.com/astro_dialog/n/ne1eb0c41956a

[3] 山本健吉の『定本 現代俳句』(角川選書、角川書店、1998年)
note「天文俳句(13)」天文俳句って、どのぐらいあるの?、再び、再びhttps://note.com/astro_dialog/n/n4617a5a94a0e

今回の『子規365日』の結果と合わせて、表2にまとめた。

文献: [1] 『365日で味わう美しい日本の季語』金子兜太 監修、誠文堂新光社、2010年) [2] 『別冊 NHK 俳句 保存版』片山由美子、NHK出版、2020年 [3] 『定本 現代俳句』山本健吉、角川選書、角川書店、1998年 [4] 『子規365日』夏井いつき、朝日文庫、2019年

結果を見ると、2%から5%。おおむね同じような値になっている。

非常に面白い結果だ。なぜなら、調べた四つの本では俳句の選び方が全く違う。『子規365日』では正岡子規一人の詠んだ俳句から選ばれているが、残りの3冊では、いろいろな俳人の俳句から選ばれている。しかも、選者が異なっている。それにもかかわらず、真の天文俳句率が同じような値になるのだから面白い。

みんな、夜空に想いを馳せる

俳句を詠む人は、皆さん時々夜空に思いを馳せるのだろうか。ありがたいことだ。

最後に子規が12月31日に詠んだ俳句を見ておこう。

来年はよき句をつくらんとぞ思ふ (明治30年)

子規には頭が下がる。

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