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天文俳句(12) 天文俳句って、どのぐらいあるの? 再び
真の天文季語
歳時記には天文に分類されている季語が結構あるが、大半は気象関係であり、「真の天文季語」は少ない。実のところ、「真の天文季語」は「月」、「星月夜」、「流れ星」、そして「天の川」の四個しかない。
次のnoteを参照されたい。「天文俳句」(1)季語における天文https://note.com/astro_dialog/n/nb90cc3b733fd
そこで、前回のnoteでは、金子兜太監修による『365日で味わう美しい日本の季語』(誠文堂新光社、2010年)を用いて、「真の天文季語」が使われている俳句の割合を調べてみた。その結果、紹介されている俳句のうち、わずか2.7パーセントが「真の天文季語」が使われている俳句だった。
一冊だけの調査なので、2.7パーセントという数字をどう捉えていいかわからない。そこで、今回は第二弾として『別冊 NHK 俳句 保存版』(片山由美子、NHK出版、2020年)を用いて調べてみることにした。
『別冊 NHK 俳句 保存版』による調査
この本は、『NHK俳句』の「巻頭名句」の傑作グラビア(2017年4月号以降)をまとめた俳句鑑賞アルバムだ(『別冊 NHK 俳句 保存版』片山由美子、NHK出版、2020年;図1)。
![](https://assets.st-note.com/img/1712490859201-XvPLSRnBIt.jpg)
紹介されている俳句の数は以下のようになっている。
「名句編」 97句
「鑑賞編」 396句(名句編の97句を含む)
では、季節毎に見ていくことにしよう。ここで「天文季語」は歳時記で「天文」に分類されている季語のことである。問題は、気象関係などの言葉の方が圧倒的に多いことだ。一方、「真の天文季語」は気象関係などではなく、真に天文関係の季語のことである。
・新年
天文季語=4
真の天文季語=0
・春
天文季語=7
真の天文季語=2
春の月さはれば雫たりぬべし 一茶
春の星またたきあひて近よらず 成瀬櫻桃子
・夏
天文季語=9
真の天文季語=0
・秋
天文季語=11
真の天文季語=7
月さして一間の家でありにけり 村上鬼城
月すでに湖(うみ)ひきはなしてありぬ 田畑美穂女
生涯にかかる良夜の幾度か 福田蓼汀(良夜=中秋の名月の美しい夜)
月の雨こらへ切れずに大降りに 高浜虚子(季語=雨月)
思はざる山より出でし後の月 福田甲子雄
豪雨止み山の裏まで星月夜 岡田日郎(にちお)
寝袋に顔ひとつづつ天の川 稲田眸子
・冬
天文季語=4
真の天文季語=0
やはり少ない真の天文俳句率
結果を表1まとめたので、ご覧いただきたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1712491019815-C7Hj1Tsn4c.jpg?width=1200)
『別冊 NHK 俳句 保存版』における、全句に対する真の天文率はわずか2.3%だった。偶然かもしれないが、金子兜太の『365日で味わう美しい日本の季語』における真の天文率(2.7%)とほぼ同じであった。いずれも400近い俳句に基づく統計だ。もう少し調査が必要だが、真の天文率は2パーセントから3パーセントと思っても良さそうだ。
美しい本
『別冊 NHK 俳句 保存版』はとても美しい本だ。最初の「巻頭名句」は各俳句に対して一枚のカラー写真が配置されている。まるで写真集を見るような趣向になっているのだ。
その例を図2に示す。
豪雨止み山の裏まで星月夜 岡田日郎
寝袋に顔ひとつづつ天の川 稲田眸子
美しい星空の写真がこれらの俳句を支える。
![](https://assets.st-note.com/img/1712491111908-SJ4XRoSWTF.jpg?width=1200)
俳句って、こうやって詠んだら
『別冊 NHK 俳句 保存版』の「はじめに」に素敵な文章を見つけた(2頁)。
春先、和菓子店に「うぐいす餅」と張り紙があるのを目にすると
街の雨鶯餅がもう出たか
という句を思い出し、初夏の食品売り場にそら豆が並ぶと、
そら豆はまことに青き味したり
という句を口ずさんだりします。
俳句って、こうやって詠んだらいいのか! すっかり感心してしまった。
夜空の星や星座もこんな感じで詠むことができたらいいのにと思った。そのときは、季語のことを忘れたいものだ。
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