心に残るエピソード〜【バトンリレー企画2022】
先日、リレーのバトンが回ってきました。
ケンブリッジ飛鳥さんからです。
……嘘です。
この方からです。
私がnoteを始めた頃からのお友達、はそやmさん。
個性的で楽しいイラストを描かれる画伯で、今や人気noterさんです。次の走者に私を指名していただいて光栄です。
このバトンの第一走者はこの方。
チェーンナーさま、はじめまして。
よろしくお願いいたします。
「心に残るエピソード」をみんなでつないでゆく企画だそうです。
素敵です。コンセプトをぶっこわさないように頑張ってみます。
もう10年以上前のことです。
たった一度だけ、それも数分間会っただけなのに、忘れられない人がいます。
もう季節も覚えていません。
仕事の帰りに、ショッピングセンターの食料品売り場に立ち寄った時のことです。
通勤途中にあるその店には、週に数回は行っていました。
19時前の食料品売り場はにぎわっていました。
さっさと買い物をして早く帰ろう。疲れていた私は必要なものをカゴに放り込んでレジに向かいました。
その頃のスーパーは、セルフレジはまだありませんでした。客はみな、どのレジの列が早く進んでいるかを見比べ、手際のよさそうなチェッカーさんの列に並ぼうとします。私もそうしました。
私の列は順調に進みました。よしよし、私の読みは当たったようです。
次が私の番、というところまで進んだ時、レジの機械に貼られたA4サイズの紙に気がつきました。
その紙にはこのように書かれていたと記憶しています。
はっとしました。
思わずその紙とチェッカーさんのお顔を見比べてしまいました。ちょっと不躾な視線だったかもしれません。
そうか、それなのにレジの仕事をされているのか。大変だろうな。
私はそんなことを思いました。思ってしまいました。
そのチェッカーさんは、私と同じ年代と思われる女性でした。すらっとした方でした。
彼女は私の視線などまったく気にする様子もなく、手をなめらかに動かしています。
そして私の番がきました。
そのひとは柔らかな笑顔で私の目を見て、口を動かしました。
「お待たせいたしました」
そう聞こえました。
テキパキとした動作で商品がチェックされていきます。
合計金額が出たところで、そのひとは指を揃えた手で画面を指し、私を見て口を動かしました。
「お会計は◯◯円になります」
確かに、そう聞こえました。
代金を支払い、会計は終わりました。
そのひとはまた私の目を見て、笑顔でこう言います。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
その言葉は、声としてではなく、彼女の表情や揃えた指や、体全体から聞こえてくるようでした。私は確かにその言葉を受け取りました。
その後その店に行くたびにレジに彼女の姿を探しましたが、二度と会うことはありませんでした。
どうしたんだろう。辞められたのかな。あれだけの仕事ぶりだったから、他店から応援に来られていたのかな。何かあったのでなければいいけど。もう一度会いたかったな。
あの時のあなたへ。
名前も知らず、もうお顔も思い出せないけれど、私はきっとこれからもあなたのことを忘れないと思います。
あなたの無駄のない所作と美しい笑顔は、もしかしたらたくさんの涙の上に築かれたものかもしれませんね。
でもあの時あなたから受けたサービスは、私の疲れを吹き飛ばしてくれました。ありがとうございました。
大変な世の中になってしまったけど、あなたがどこかで幸せでいてくれますように。
あなたが笑顔でいられるような世界でありますように。
【バトンリレー企画2022】立案者のチェーンナーさま、走者の皆さま方、バトンをくださったはそやmさん、ありがとうございました。とても楽しかったです!
このあとは他の1、2名の方にバトンをつなぐか、一旦お返しするか、のルールのようです。
私と同じものを推す方や好みが似た方、私が憧れている国々にお住まいの方、過去に住んでおられた方、素敵な物語を紡がれる方、私がフォローさせていただいているたくさんのnoterさん達が思いおこされます。
バトンをつなぎたい方が多すぎる!
というわけで、迷いましたが私のバトンは第一走者のチェーンナーさんにお返ししたいと思います。チェーンナーさんから、再び楽しいリレーが始まることでしょう。
そしてバトンに関わらず「心に残るエピソード」を書いてくださるnoterさん、楽しみに待っています。
よろぴく!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?