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スタートアップ面接での衝撃的な説教 キャリア選択について考える

今日は最初の転職活動のときの話をしたい。特に20代でキャリアに悩んでいる人に読んでもらえると幸いだ。長文なのは許してほしい。

当時の自分は新卒で入った会社で2年間働いた後、1年間のキャリアの空白を経て大学院に通っていた。

自分は重度の障害を持つ兄がいる。世間でいわゆるきょうだい児と呼ばれるやつだ。当時父親が体調を崩して何ヶ月か入院しなければいけないことになり、東京で働いていた私は兄の介護のために地元に帰ることにした。

建前としてはそうであるものの、別の理由もあった。当時在籍していた会社はそれなりの大手で、国内外に多数のグループ会社を抱えており、私はそのグループ会社の管理会計を行う仕事をしていた。当然海外のスタッフとのやりとりや会議なんかもあるグローバルな仕事なので、ぱっと見は面白そうに見えるものの、どうにも当時の自分にはその面白さが理解できなかった。
そんなときに父親が体調を崩したので、これ幸いと会社を辞めて興味関心の出てきた分野の大学院に行こう、と地元に帰ってきたわけである。

1年間兄の介護をしながら院試の勉強をし、社会人入試という比較的イージーな試験を受けて大学院が進学した。大学院生活はかなり充実していて、1年間分の学費を給付奨学金でもらったりだの、修了生代表で卒業式で証書をもらったりだの、勉強した成果はしっかりと出せた。

本当は博士課程に進学したかったが、さすがに20代半ばとなると仕事で成果を出す友達との格差が見えてしまうようになる。経済的自立ができていないというのは思いの外精神的にダメージが大きく、働きながらでも博士は取れるだろうと思い転職活動をすることに決めた。

そんなわけで転職活動を開始したはいいものの、当時でも珍しい社会人大学院生(しかもキャリアの空白がある)が簡単に内定が取れるはずもない、と自分は考えていた。(今にして思えばこれはただのバイアスだった)そこで、比較的キャリアの自由度が高いコンサルタント職やスタートアップをメインに据えて活動を進めていくことにした。

そんな中でスタートアップの社長と面接をしたとき、今までの自分の選択をものすごい勢いで否定された。
物珍しいキャリアではあったので向こうも色々聞きたかったのだろうけれど、その選択は世の中を甘く見すぎていると、そんな選択の仕方ではまともなキャリアを築けないと面接中に説教されてしまった。

確かに自分の興味による選択については、ある意味世捨て人のような感覚でなりふり構わず決めてしまった自覚があったので、いわんとすることはわからいではなかった。当時の自分が一番引っかかったのは、家族の拠点を東京に移すという選択の方が合理的だろう、といわれたことだった。

面接の中で使える建前の部分もあるとはいえ、家族のために帰ってきたという私に対してそんなことをいう人間は今までいなかった。驚きの一方で、障害者の生活拠点を移転する難しさや、老いた両親、障害を持つ中で地元でコミュニティを作ってきた足を全く見知らぬ土地に移住する負担を考えないその発言に、世の中の障害者に対する不理解と新自由主義の怖さを感じたことを今でも覚えている。当然ごとく、そんな合理的な選択ができない人材は採用できないと言われ面接は落とされた。

では実際にその社長のいう合理的な選択ができなかった自分はどうなったか?これが面白いところで、大手の外資コンサルや会計事務所からコンサルタント職の内定をもらうことができた。

当然といえば当然の話で、合理的か否か、その選択が正しいか間違っているかだけでキャリアは決まらない。面接官も人間なのだから、受け取る印象や大事に思う部分はそれぞれだ。しっかりとポテンシャルを示す努力ができれば、何かしらのことでキャリアが開く可能性はあるわけだ。

恐らく件の社長は今の私の状況はしるまいが、今の職場ではそこそこうまくやれているし、平均以上の年収もある。転勤のない職場なので、実家の両親や、ヘルパーの助けを得て一人暮らしを始めた兄のサポートにもすぐに向かうことができる。その意味で、このキャリアの選択は私にとって十分に良い選択だったといえると思う。

20代のうちは特にキャリアで悩むことも多い。自分のキャリアの選択が間違っていないか、他人にどう映るのか不安になることもあるだろう。しかし、ある程度までは自分のわがままや直感で選んでもいいと私は思う。選択が合理的であることと、自分の思うキャリアの正解にたどり着けるかどうかはイコールではない。むしろ諦めてしまうことや合理的であること、正解を追い求めることに固執する方が逆にキャリアを狭めてしまうこともありうる。今の若い方はコスパを重要視して失敗しない道を選びたい志向が強いとは聞くけれども、やってみれば案外上手く転がっていくこともある。そういう偶発的なことも楽しめてこそ、充実したキャリアが積めるのではないかと思う。


#転職体験記 #キャリア #転職 #大学院


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