さよならのラブソング

さよならのラブソング - episode 8

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>> episode 7

太陽が眩しい。そよ風が気持ちいい。草のそよぐサラサラという音が心地いい。このまま横になっていたいと思っていたが、サラは起きて欲しそうだった。
「さっきどこまで話したっけ?未来と今のことだったよね?」
「うーん、何の話?」
「たいちゃんが訊いてきたじゃん。」
一瞬、考えた。そうだった。ここに来る直前に、彼女に「未来がどうたら」の話を聞こうとしていたんだった。

「じゃあ、ダリアンの家に行く?私今日はお稽古済んだから、お喋りでも大丈夫だよ。ダリアンはね、すっごくストイックで厳しいんだけど、終わったら優しいから大丈夫。」
訊いてもいないのにベラベラ話す。今からダリアンの家に行くようだ。だから、その丘に行く途中の草原に僕は寝ていたのか。ゆっくりと身体を起こして、立ち上がった。通勤服が草まみれで、払いながら丘の上を目指した。

ダリアンの家のリビングのテーブルにつくと、彼はサラに話しかけた。
「頑張り屋さんだね、サラは。」
「えへ、そうかな。」
サラは照れていた。
「それでも、結構お家に帰っちゃうの、私。言った通り、私たちは強く決心したんだよ。だけど、やっぱり帰っちゃうときがあるんだ。」
「最初はそんなもんだよー。俺はもう帰れる距離じゃないからさ、帰らないし、帰ったら家族のことうんと大事にしたいと常日頃思ってるよ。」
あっけらかんとした表情でダリアンはお茶を飲んだ。
「帰るって?サラはこの島に家があるんじゃないの?それに、ダリアンさんはそんなに家が遠いんですか?」
「うん、私の家はね、本当はね、海の向こうのすぐそこの島なんだ。ツガイ君がそこに住んでるの。ダリアンはね、ずっとずっと遠くから来てるんだよ。キャンペーンが始まったの。」
「キャンペーン?」
何かお祭りでも始まったから一時的に来ているということなのだろうか?
「お祭りか何かやるの?」

一瞬だけ、サラは俯いて寂しそうな顔をした。そして顔を上げて、話し始めた。
「『計画的分離』ていうやつ。」
「計画的分離?」
「うん。分離って寂しいよね。誰かとお別れするの。だけど、敢えてそれをやろうっていうのが世界で始まっているんだ。」
「どうして?」
と訊くと、ダリアンが答えた。
「それは成長と繁栄のためだよ。」
「今は、始まったばかりだから、統合の時代の名残の方が大きいの。だからみんな仲良しだよ。平和だしね。」
「えっと、まず。何が分離するんですか?それと、『成長と繁栄のため』ってどういうこと?」

>> episode 9

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